過日行われたクラブワールドカップ(CWC)。開催国枠で出場した鹿島アントラーズは、アジア勢初となる決勝進出を果たしました。日産スタジアムでのファイナルでは、あの“銀河系軍団”のレアル・マドリードをあと一歩のところまで追い詰めました。優勝カップに手は届かなかったですが、この経験は選手にとってはかけがいのない財産になったはずです。

 

MVPは昌子と曽ケ端

 

 得点力のあるFW金崎夢生、FW赤崎秀平、前線をコントロールするMF柴崎岳の出来もよかったですが、大会を通して「鹿島伝統の堅守が成熟してきたな」と感じました。僕が選ぶMVPは2人います。1人目はDF昌子源です。クレバーな判断で相手の攻撃を先読みして、相手FWを潰していました。「勝つために何をすべきか、何を切り捨てるべきか」といった判断が冴えていました。トッププレーヤーとのガチンコ勝負が、彼を一層大きく成長させてくれるでしょう。元々、潜在能力は高いのですから、昌子には日本を代表するセンターバックになって欲しい。それだけの技量と戦術眼を存分に発揮した大会だったと思います。

 

 2人目のMVPはGK曽ケ端準です。曽ケ端がいなかったら鹿島はもっと早い段階で負けていたでしょう。それくらい曽ケ端のファインセーブに救われました。しかし、曽ケ端1人の力でファインセーブが生まれるわけではないんです。GKとDFの間には繊細な相対関係があります。昌子がシュートコースを限定することで、曽ケ端がカバーする範囲は狭くなる。プロならば当然でしょうが、今の鹿島はかなり高いレベルでGKとDF陣の連携が噛み合っています。曽ケ端は「このパターン、昌子なら左のコースを切る」「植田なら右のコースを切る」といった経験に裏打ちされた咄嗟の読みが素晴らしかったですね。守備にも“阿吽の呼吸”が存在します。堅守を保つためには一番大事なことです。

 

 昌子や曽ケ端の活躍を見ていて改めて「センターバックやGKは経験が大事なポジションだ」と強く感じました。昨今のサッカーでは反応の速さやスピードを求められがちですが、指示を出しながら相手のシュートコースを切る、相手のプレーを限定させておいて自分のところで仕留める、といったことがDFでは大切です。これこそがDFの醍醐味ではないかな、と思います。

 

日本サッカーを愛する人の目標になった鹿島

 

 Jリーグのチームも、世界のビッグクラブと対等に渡り合えることを鹿島は証明しました。鹿島の活躍を見て、「オレたちが応援しているクラブだって頑張れるはずだ!」と思う他チームのサポーターの方もいるのではないでしょうか。そういった意味で鹿島は、日本サッカーを愛する人たちの1つの目標になったのではないかなと思います。あの戦いを見たら、各クラブが今後はもっとアジアチャンピオンズリーグ(ACL)に力を入れてくるでしょう。しばらくCWCは日本での開催がありません。JリーグのチームにはACLを制して、あの舞台に立って欲しい。それが鹿島であればなおさら嬉しいです。

 

 さて、応援する我々がCWCで燃え尽きている場合ではありません。今シーズンはまだ天皇杯が残っています。24日にベスト4が決まりました。準決勝は鹿島対横浜F・マリノス、大宮アルディージャ対川崎フロンターレの対戦カードです。鹿島は連戦による蓄積疲労が懸念されていますが、僕はそんなに心配はしていません。良い勝ち方のゲームが続いている時は、疲労はさほど気にならないものです。今、鹿島の選手は充実した時期を過ごしているはず。このままの勢いで天皇杯も鹿島が獲ってくれればなと思います。

 

 来年はJ1が1シーズン制に戻ります。代表は3月から最終予選が再開しますね。今年以上に選手たちには熱い戦いを見せてほしいものです。また、この1年、読者の皆様には大変お世話になりました。来年も宜しくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima-hsp.com/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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