25年目のJリーグがスタートした。開幕戦では、昨季の年間王者・鹿島アントラーズがFC東京に敗れ、黒星スタートとなった。昨年2位の浦和レッズも敗れ、波乱の幕開けとなった。

 

 

 鹿島で注目していた選手がいる。FWの鈴木優磨だ。千葉県出身の20歳。生まれた時には、既にサッカーは日本を代表するスポーツになっていた。

 

 鹿島のローカルスターだった鈴木が、一躍、全国区に躍り出たのは昨年のクラブW杯だ。

 

 準決勝での南米王者・アトレティコ・ナシオナル戦。防戦一方の時間帯の後半39分、MF中村充孝に代わって出場した鈴木は、とどめの3点目を決めた。

 

 ピッチに出てわずか1分後だった。右サイドに開いたFW金崎夢生がグラウンダーのクロスをペナルティーエリア内へ。相手DFの死角にポジションを取った鈴木がどんぴしゃのタイミングで合わせた。

 

 鹿島ユースの出身。いわゆる生え抜きである。

 

 元日本代表DFで、鹿島の先輩にあたる大野俊三は、鈴木をして「調子に乗ると手の付けられないタイプ」と評する。

 

「彼はDFを抜き切らなくてもシュートを打つでしょう。DFとしては、コースを少しでもあければ(シュートを)打たれるというのが一番嫌なんです。彼はゴールから少々、距離があっても、積極的に狙ってくる。(DFにとっては)とても扱いにくいタイプですよ」

 

 一方で次のような苦言も。

 

「勢いに乗ると手が付けられない半面、はじめから強めにプレスをかけておくと、自分から潰れてしまうような面がある。悪い時は悪いなりに自分をコントロールする術を身に付けておくべきでしょう」

 

 ストライカーはある意味、エゴイストである。「オレがオレが」というタイプでなければ、修羅場では輝けない。

 

 日本サッカー最高のFWと言えば、釜本邦茂をおいて他にはいない。釜本は師であるデットマール・クラマーから、FWの心得について、こう教わったという。

 

「ストライカーはハンターだ。狙った獲物は一発で仕留めろ!」

 

 話を20歳のストライカーに戻そう。「これは見所のある青年だな」と思ったのは、昨年のチャンピオンシップ第2節だ。浦和との初戦を0-1で落としたことで、優勝するためには2得点以上での勝利が条件となった。

 

 1対1で迎えた後半32分、鹿島は願ってもないチャンスを得た。ペナルティーエリア内で鈴木がDF槙野智章に倒されたのだ。

 

 鹿島のPKは金崎が蹴ることになっている。これはチームの決め事だ。ところが、である。金崎の側で、何やら鈴木がぶつくさ言っているのだ。

 

「オレに蹴らせて欲しい」

 

 チームメイトになだめられ、しぶしぶペナルティースポットをあとにした鈴木だったが、その表情には悔しさが浮いていた。

 

「(今季は)リーグ戦で15得点をあげたい」

 

 今季から背番号はエースストライカーの象徴とされる「9」に。得点王争いにからむくらいの活躍が望まれる。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2017年3月19日号を一部再構成したものです>

 


◎バックナンバーはこちらから