6月13日にアウェーで行われるイラク戦のメンバーが発表されました。今回は約2年ぶりにFW乾貴士(エイバル)が代表復帰。GK中村航輔(柏レイソル)、DF宇賀神友弥(浦和レッズ)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)、そして、ブルガリアリーグに所属するMF加藤恒平(PFCベロエ)が初選出されました。今回は調子が良い選手、波に乗っている選手を中心に選考された印象が強いです。日本代表は一番状態が良いメンバーが集まるべき。当然と言えば当然ですね。

 

 リーガエスパニョーラ最終節のバルセロナ戦で2ゴールを挙げた乾の復帰は嬉しいです。サイドからドリブルで仕掛けたり、トリッキーなプレーが彼の持ち味です。相手に引いて守られた時には、うってつけの人材だと僕は思います。

 

 柏の若き守護神・中村もJリーグで素晴らしいパフォーマンスを見せています。リオ五輪での経験が彼を成長させた気がしますね。抜群の反射神経と先を読んだポジショニングが良いGKです。チームもリーグ13節終了時点で勝ち点27の首位です。自信を持って代表に合流してほしいです。

 

 今季からG大阪へ加入し、センターバックのレギュラーの座を掴んだ三浦も呼ばれました。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「組み立てでも賢さを見せている」と評価しています。DF陣には吉田麻也(サウサンプトン)、槙野智章(浦和レッズ)、昌子源(鹿島アントラーズ)がいるため、出場機会があるかは不明です。ですが、現代サッカーに求められる攻守に貢献できるセンターバックとして期待されているようです。

 

 宇賀神も初めて呼ばれました。クラブではウィングバックですが、指揮官は左サイドバックとして考えているようです。宇賀神は元々は右利きですが、左足でも蹴れます。攻撃でもアクセントになれて、しっかりと守備対応もできる左サイドバックを見つけたいのでしょう。同じポジションのDF長友佑都(インテル・ミラノ)に脅威を与えられるか楽しみです。

 

 そして、誰もが「えっ!」と思ったのが、ブルガリアリーグ所属の加藤です。「山口蛍(セレッソ大阪)に似ている」と言うように、ハリルホジッチ監督好みのタイプですね。Jリーグでもなく、ヨーロッパの主要リーグ所属でもなくても、“代表に入れるんだ”と思わせてくれる人選です。他にも単身で海外に渡り、プレーしている日本人はいます。そういう選手たちに希望を与える選出でもありますよね。

 

 イラク戦が行われるテヘランはピッチの状態が悪く、指揮官は「ロングボールが増えて、セカンドボールの奪取がカギとなる」と予想しています。ですが、前半開始から日本もロングボール主体で戦うのは得策ではない気がします。ある程度、肉弾戦に強いメンバーを起用しながらも、今まで培ってきたポゼッションサッカーも大事にした方が良い気がします。長いボールを多用するサッカーは身体的に日本人に不利になり兼ねません。今までのプランを大きく変更する必要性はないと思います。イラクに勝てばロシア行に王手がかかります。負けられない戦いが続きますね。

 

 最後に、先日韓国で行われたU-20W杯で日本代表はベスト16で敗退しました。結果は残念でしたが、東京五輪世代、そして飛び級で試合出場したFW久保建英(FC東京U-18)はこの経験を必ず次に生かして欲しいです。選手たちは若くして世界の舞台を経験しました。彼らがより一層大きな成長を遂げることが日本サッカー界の未来を明るくしてくれます。それに、今回選出されなかった東京五輪世代の選手たちの今後の奮起にも期待しましょう。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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