大柄な割にはテークバックが小さく、何人かのバッターに印象を聞くと、「いきなりボールがくる感じ」という答えが多かった。「タイミングが取りづらい」とも。

 

 3年目の薮田和樹が絶好調だ。6月14日現在、26試合に登板して6勝1敗、防御率2.30。野村祐輔の離脱で得た先発のチャンスをしっかりモノにし、今ではローテーションになくてはならない存在だ。

 

 さる6月13日、三次きんさいスタジアムでのオリックスとの交流戦では8回5安打1失点の好投で、球界を代表する右腕である金子千尋に投げ勝った。

 

 周知のように薮田のアマチュア時代の実績はパッとしない。岡山理大附属高時代は3年時に右ヒジを疲労骨折し、甲子園にも出ていない。

 

 亜細亜大学での登板も、わずか2試合のみ。右ヒジの骨折、右肩痛とケガに泣かされ続けた。それゆえ、カープが2014年のドラフトで2位に指名した際には「本当に投げられるのか!?」といぶかったものだ。

 

 過日、薮田の2位指名を強力プッシュした松本有史スカウトと食事をする機会があった。松本は薮田にとって亜大での先輩にあたる。

 

「昔からケガばかり。プロに入ってからも最初は股関節の疲労骨折、その後は足の疲労骨折に泣かされました。しかし、練習はよくする子なので、ケガさえ治ればこのくらいはやるだろうと思っていましたよ」

 

 岡山理大附、亜大の1年先輩にあたるのが九里亜蓮である。九里が5勝だから2人合わせて11勝をあげている。カープにすれば岡山理大附さまさまである。

 

「亜大の生田勉監督とは仲良くさせてもらっています」と松本。

 

 1年時からマスクを被る亜大の頓宮裕真も岡山理大附の出身。強肩強打のキャッチャーとして評価が高い。ラインを読めば来年のオフのドラフトではカープが指名する可能性が高い。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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