24日、世界陸上競技選手権大会(8月、イギリス・ロンドン)日本代表選考会を兼ねた「第101回日本陸上競技選手権大会」2日目が大阪・ヤンマースタジアム長居で行われ、男子100メートル決勝はサニブラウン・アブデル・ハキーム(東京陸協)が10秒05の大会タイ記録で優勝した。サニブラウンは世界選手権の参加標準記録を突破し、日本陸上競技連盟の設けた選考条件をクリア。2015年北京大会に続き、2大会連続の出場を決めた。

 

 2年連続で雨模様の決勝となった男子100mは、サニブラウンが歴代王者たちを下して初優勝を手にした。

 

 リオデジャネイロ五輪400mリレー銀メダルメンバーの山縣亮太(セイコー)、桐生祥秀(東洋大)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)の3人に加え、新星も加わった。5月のゴールデングランプリ川崎で3位に入った多田修平(関西学院大)である。大会前の日本学生陸上競技個人選手権大会では準決勝で追い風参考ながら9秒台をマーク。決勝では日本歴代7位(当日)の10秒08を叩き出した。

 

 10秒0台の自己記録を持つ桐生、山縣、多田の3人がエントリーした今大会にはこれまで以上に9秒台の期待が集まっていた。さらに予選から好記録が続いた。サニブラウンが10秒06、ケンブリッジが10秒08をマーク。決勝に進出した8人中5人が日本歴代10傑に入るハイレベルな争いとなった。

 

 一瞬の静寂に包まれて、号砲が鳴る。スタートを得意とする山縣、多田が飛び出した。しかし山縣は故障明けで本調子ではないのか、ここから伸びない。多田が先行。スタートは得意ではないサニブラウンがすぐにとらえ、トップに躍り出た。中盤から伸びてくる桐生、後半型のケンブリッジが追いすがるも届かない。

 

 サニブラウンは力強い走りで誰よりも先にフィニッシュラインを駆け抜けた。10秒05は予選、準決勝でマークした自己ベストを0秒01上回るタイム。2002年に朝原宣治が出した大会記録に並ぶものだった。2位には粘りを見せた多田が10秒16で入り、昨年優勝のケンブリッジは後半追い上げたものの10秒18で3位だった。

 

「レース前からとても楽しみだった」とサニブラウン。大舞台で力を発揮できる勝負強さが出たかたちだ。15年の日本選手権で100mと200mで2位に入った。その後は世界ユース選手権で100m、200mの2冠を達成。世界選手権北京大会では200mで準決勝進出を果たした。故障で昨年の日本選手権は欠場。リオ五輪出場はならなかったが、再び第一線に戻ってきた。

 

 日本陸連の科学委員会が出したデータによると、決勝でのサニブラウンの最高速度は秒速11.52m。9秒台も現実のものとして見えてくるスピードだ。秋からフロリダ大学に進学する18歳のスプリンターは「世界陸上では決勝に残っていいパフォーマンスができればと思います」と語った。今大会は200mにもエントリーしており、予選2組を1位で突破した。25日の決勝で2冠を狙う。

 

(文/杉浦泰介)

 

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