第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の復路が3日、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの5区間(109.6km)が行われた。青山学院大学が大会新の10時間41分25秒で2年ぶり7度目の総合優勝を果たした。2位は駒澤大学が6分35秒差、3位には城西大学が11分2秒差で入った。上位10チームに与えられる次回大会のシード権は、この3校に加え、東洋大学、國學院大学、法政大学、早稲田大学、創価大学、帝京大学、大東文化大学が獲得した。大会MVPにあたる金栗四三杯には城西大の山本唯翔(4年)が輝いた。 

 

 総合順位は以下の通り。

(1)青山学院大(2)駒澤大(3)城西大(4)東洋大(5)國學院大(6)法政大(7)早稲田大(8)創価大(9)帝京大(10)大東文化大(11)東海大(12)国士舘大(13)中央大(14)立教大(15)日本大(16)日本体育大(17)順天堂大(18)駿河台大(19)中央学院大(20)明治大(21)神奈川大(22)東京農業大(23)山梨学院大

 

 往路から一夜明け、早朝の芦ノ湖から小田原まで駆け下りる”山下りの6区“(20.8km)は4kmを登ると一気に下りに変わる。標高差800m以上の下り坂はスピードに乗り、カーブも加わるため足への負担も大きいコースだ。追いかける駒大は差を詰めたいところだが、ここで逃げる青学大の野村昭夢(3年)が大仕事。58分14秒で駆け抜け、区間賞は58分2秒をマークした法大の武田和馬(3年)に譲ったものの、区間2位の好走で2位・駒大との差をさらに1分以上も広げた。

 

 7区(21.3km)を任された青学大の山内健登(4年)は最初で最後の箱根路だ。終盤、顎が上がり苦しい表情を浮かべたが、残り1kmで原晋監督の檄が飛ぶ。「さぁさぁさぁ、いくよ、いくよ、いくよ、健登! そこは笑顔で襷リレー! 成長した姿を全国の皆さん、お世話になった方に届けるよ!」。力を振り絞り、区間3位の1時間2分46秒。2位との差をさらに27秒広げた。7区の区間賞はシード権争いの真っ只中にいた中大の吉居駿恭(2年)。序盤飛ばし、途中苦しそうな表情を浮かべる場面もあったが、兄・大和(4年)の給水を受けながら踏ん張り、1時間2分27秒で後続に襷を渡した。

 

 2位に4分44秒リードして襷を受け取った青学大の8区(21.4km)は塩出翔太(2年)。「この1年間、箱根駅伝のために練習してきた」。先輩2人に続き、リードを広げて総合優勝への勢いを加速させる。15.9km通過の遊行寺坂で46分18秒と区間記録よりも11秒速いペースを刻む。区間記録更新はならなかったものの、現在のコースとなった8区の歴代3位の1時間4分00秒。塩出が「走る前から狙っていた」という青学大の記録(2016年、下田裕太=1時間4分21秒)を更新した。世羅高校の2学年先輩である9区の倉本玄太(4年)に繋いだ。

 

 復路最長の23.1kmを走る9区は、復路のエース区間。初の箱根駅伝となる倉本は走る前に原監督から電話を受け、「思い切って突っ込んで行け」とアドバイスをもらった。指揮官に背中を押された4年生は、序盤から、どんどん後続との差を開いていく。同区間歴代9位となる1時間8分51秒の好タイムでまとめ、「今までやってきたことは間違いじゃなかったと証明できたと思います」と胸を張った。2位・駒大との差は6分23秒まで広げ、優勝をほぼ決定付けた。9区とほぼ同じ23.0kmの10区。独走態勢に入った青学大アンカーの宇田川瞬矢(2年)がフレッシュグリーンの襷を大手町に届けた。5時間23分12秒で復路を制し、総合タイム10時間41分25秒は2年前の優勝時の大会記録(10時間43分42秒)を2分以上塗り替えるものだった。

 

 戦前の予想では史上初の2季連続の駅伝3冠がかかっていた駒大が優位と見られていたが、青学大・原晋監督が掲げた「負けてたまるか!」の作戦名通り、意地を見せた。復路は全員が初の箱根駅伝出場というフレッシュな陣容だったが全員が区間上位に入り、そのうち2人が区間賞と抜群の安定感を見せた。復路は全員が貯金を消費することなく差を広げ続けた圧勝だった。12月、集団インフルエンザにチームは危機的状況に陥った。「シード権を獲れるかどうかというチーム状態だった」と原監督は振り返る。青学大150周年、原監督就任20年、箱根駅伝100回目。メモリアルな大会で記憶に残る快勝劇を演じた。原監督は「多くの人に支えられて今日を迎えられた」と感謝した。今回の優勝メンバーは7人も残る。果たして、ここから黄金時代を築くのか――。

 

(文/杉浦泰介)