鈴木規夫というプロゴルファーがいる。御年66歳。日本ツアー16回の優勝を誇る。精度の高い低弾道のショットに定評があった。

 

 世界を驚かせたのは1976年の全英オープンだ。予選から出場し、本選では初日にトップに立った。結果は10位。海外メジャーで日本人がトップ10に入ったのは初めてだった。

 

 トップに立った初日、ホールアウトすると、あのジャック・ニクラウスが「オー! ジャパニーズ ヤングボーイ!」と言って握手を求めてきたという。帝王をも驚かせた鮮烈な海外デビューだったのだ。

 

 鈴木には無二の友人が2人いる。カープの山本浩二と競輪の中野浩一だ。今でも一緒にゴルフをしたり酒を飲む仲だ。

 

 だが、ただの仲良しではない。1年のはじめに、「今年の目標」を互いに確認し合うという。いちばん目標から遠かった選手は、シーズンオフ、他の2人にご馳走しなければならない。他愛もない決め事だが、これが励みになったというのである。

 

 同業者だと、なかなか腹を割って話すことができない。明かしたくない秘密もあるだろう。それが違う競技の選手だと、腹蔵なく語り合うことができる。

 

 加えていえばトレーニングや医療に関する情報を他ジャンルの選手から仕入れることもできる。なるほど、一石二鳥というわけだ。

 

 一般社会においても“異業種交流”花盛りである。オフは球界外の友人づくりに励んでほしい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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