伝統の早明決戦 明大、日本一“完遂” 〜全国大学選手権〜

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 11日、第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝が東京・MUFGスタジアム(国立競技場)で行なわれ、明治大学(関東大学対抗戦グループA1位)が早稲田大学(同3位)を22-10で破り、7年ぶり14度目の優勝を果たした。

 

 早大17度、明大13度の優勝を誇る伝統校同士の決勝は、明大が制した。

 

 早明による選手権決勝は、6年ぶり11度目。その時は早大が優勝しているが、通算では明大が6勝4敗と勝ち越していた。直近の試合(関東大学対抗戦Aグループ)では明大が勝っていた。この日のMUFGスタジアムには4万3000人を超える観客が集まった。

 
 互いの蹴り合いからスタートしたゲーム。自陣でプレーする時間を避け、敵陣で相手にプレッシャーを掛けたい意図が見て取れた。早大は8分に相手の反則でペナルティーを獲得すると、迷わずショットを選択。ほぼ正面のPGをCTB野中健吾(4年)が決めて先制した。
 
 明大はキックだけに固執せず、SO伊藤龍之介(3年)のランを織り交ぜ、相手の守備ラインを切り裂く場面もあった。対抗戦では苦しんだスクラムはこの日は優勢に。17分、相手ボールのスクラムでコラプシングを誘った。ここで得たペナルティーでラインアウトを起点にPR田代大介(3年)が豪快なダイビングトライ。CTB平翔太(4年)のコンバージョンも決まり、7-3と逆転した。
 
 セットプレーでのプレッシャーをラインアウトでもかけた。22、23分には相手ボールのラインアウトをLO亀井秋穂(4年)が手をかけて連続スティール。エリア重視の戦い方を進める早大に思うようにボールを運ばさせない。
 
 リズムに乗れない早大は28分、FB矢崎由高(3年)が空中での危険なプレーでイエローカード。追いかける展開で数的不利を余儀なくされると、SO服部亮太(2年)が自陣のトライエリア(インゴール)目前でボールを奪われた。直後に明大CTB東海隼(4年)にグラウンディングされたかと思われたが、TMO(ビデオ判定)の末、ノートライ。
 
 プレーは明大ボールでの5mスクラムで再開。明大は圧力を掛け、早大の反則を誘う。直後のラインアウトモールは早々に崩されたが、FWが近場を攻めてトライエリアににじり寄る。ここで田代のパスが乱れた。それを拾った伊藤がパスダミーを入れて中央にスペースをつくると、そのまますり抜けるようにしてトライエリアに侵入した。ボールを置いて12-3、平のコンバージョンキックも決まり、14-3とリードを広げた。
 
 明大11点リードでハーフタイム。後半最初のスコアは明大だった。8分、センターライン付近で平のオフロードパスを受け取った東が大きくゲイン。22mライン内に入ったところで伊藤が左サイドへ飛ばしパスを送った。FL大川虎拓郎(3年)がトライエリア左に飛び込んだ。
 
 
 19分には敵陣でのマイボールスクラムで、この日3度目の反則を誘った。ここは平がショットを選択。確実にPGを決め、22-3と19点差に広げた後も明大はアグレッシブなディフェンスで早大にプレッシャーを与え続けた。23分には矢崎のノックフォワード(ノックオン)、25分には服部のノット・リリース・ザ・ボールを誘った。
 
 早大も意地を見せる。32分、自陣からボールを繋いで矢崎がランでゲインする。大外のWTB鈴木寛大(3年)に敵を引きつけ、パスを送った。鈴木はオフロードパスで、内側にサポートに入ったSH渡邊晃樹(2年)へ。渡邊がトライエリア右中間に飛び込んだ。野中がコンバージョンキックを決め、12点差に迫った。
 
 37分には服部の鋭いランを起点に22mライン内に侵入するも、ノックフォワードでチャンスを逸した。終了間際にも服部のランなどでトライエリア目前まで迫ったが、届かなかった。
 
 明大の準備が生きた試合だった。キャプテンの平は試合後、「今週1週間、“オールコネクト”というフォーカスのもとで準備してきました。フィールド外のメンバーやファンの皆さんが一つになって戦えたことは、本当に良かった。フィールドに立っている15人が、この1週間で強化してきたディフェンスをしっかり見せることができた」と胸を張った。昨年12月の対抗戦では早大の司令塔・服部にプレッシャーをかけ続け、ミスを誘った。この日も早大のキーマン、服部と矢崎に対するプレッシャーは特に激しいように映った。
 
 セットプレーでも優位に立ったのは読み通りだったのだろう。「セットプレーでどれだけプレッシャーをかけられるか。ノンメンバーが仮想・早稲田をしっかりやってくれた。身体で覚えていました」と田代。12月の対抗戦では劣勢となったスクラムでもリベンジを果たし、田代は「ここで打ち負かすという気持ち。シンプルに真っすぐ8人でヒットして前に出ることをやってきました」と語った。
 
 この試合、エリアマネジメントを重視し、キックを多用した早大だったが、明大のバックス陣にうまく対応されてしまった。大田尾竜彦監督は、自分たちのアグレッシブさを引き出せなかった要因として「キックとランのバランス」を挙げ、「非常にうまくいっていた」という準々決勝(天理大学)、準決勝(帝京大学)のようにはいかなかった。
 
 一方で明大、特に司令塔の伊藤は、キックとランの判断が絶妙だった。明大の神鳥裕之監督は「彼は本当に替えの利かない選手。チームリーダーが平翔太だとするなら、ゲームリーダーは伊藤龍之介だと言えるぐらいの存在でした。今シーズンになって、プレーの一貫性も非常に出てきていますし、これからの成長が楽しみだなと感じています」と高い評価を与えた。
 

 今季の明大は順風満帆なスタートではなかった。それこそ“想定外”の連続。8月の長野・菅平合宿最終日に20歳未満の学生1人を含む飲酒が発覚した。対抗戦の初戦は筑波大学に敗戦。11月の慶應義塾大学戦は24―22と辛くも勝利した。その後、週4日、最長4時間に及ぶミーティングを重ねてチームの絆は強固になっていったという。

 

 7年ぶりの日本一を達成した明大の今季のスローガンは“完遂”。報道陣からの「今日の試合は、スローガンの“完遂”できたと感じますか?」との問いに、神鳥監督は「見ての通り僕はできたと思います」と答えた。

「完璧に遂行するという意味においては、(シーズンの)途中、途中、失敗もあったし、ご迷惑をかけたり、うまくいかないことも、ラグビーにおいても、オフフィールドでもあったんですが、僕が感じる“完遂”というのは、“完遂”に向かってそれをやっぱり必死に努力し、次の失敗を成功に変えるための努力をしていくという姿勢が大事だというふうに思っていました。ここに至るまでのプロセスという部分は当然、完璧ではありませんでしたが、結果を見て僕は“完遂”できたというふうに彼らには伝えてあげたいなと思います」

 
(文・写真/杉浦泰介)
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