8月21日(水)

◇準決勝
 2年生エース高橋光、1失点完投
日大山形        1 = 000001000
前橋育英(群馬)    4 = 11100010×
 好投手・高橋光成(2年)を擁し、初出場ながら準決勝まで勝ち進んできた前橋育英と、県勢初のベスト4をつかみとった日大山形との試合は、好守備が光る好ゲームとなった。
 初回、日大山形が先制のチャンスをつかむ。1死から2番・中野拓夢(2年)、3番・峯田隼之介(3年)と、高橋光に連打を浴びせると、4番・奥村展征(3年)は四球を選び、満塁とした。しかし、ここは前橋育英のバックが見せた。5番・吉岡佑晟(3年)の強烈な打球を二塁手・高橋知也(3年)が見事にキャッチし、4−6−3のダブルプレーでピンチを切り抜けた。

 ピンチの後にチャンスあり。その裏、日大山形は1番・工藤陽平(2年)、2番・高橋知がお返しとばかりに連打で出塁すると、3番・土谷恵介(3年)が送りバントを決めて、1死二、三塁とした。4番・荒井海斗(3年)の犠牲フライで前橋育英が先取点を挙げた。

 2回裏、前橋育英は2死無走者から8番・田村駿人(3年)が三塁打を放つと、続く9番・楠裕貴(3年)のタイムリーで1点を追加。さらに3回裏にも1死三塁から荒井のタイムリーで1点を挙げ、その差を3点とした。投げては今大会3試合に登板して1失点と好投を続けてきた高橋光が、日大山形打線にストレートを打ちかえされて毎回のようにランナーを背負うも、キレのある変化球で要所を締め、5回まで無失点に抑えた。

 5回裏、先頭の工藤がヒットを放ち、高橋知が送りバントを決めて前橋育英が1死二塁としたところで、日大山形はここまですべて一人で投げ抜いてきたエース庄司瑞(3年)から2番手・佐藤和将(2年)にスイッチした。佐藤はいきなり四球を出すものの、その後はバックの好守備にも助けられて無失点で切り抜けた。すると6回表、日大山形は先頭の4番・奥村展征(3年)がこの試合チーム初の長打となる二塁打を放つ。すると、前橋育英の中継が乱れている間に奥村はすかさず三塁へ。続く吉岡の犠牲フライで日大山形が1点を返した。しかし7回裏、前橋育英は貴重な追加点を挙げ、再び3点差とした。

 打線から援護をもらった高橋光は、連投の疲れを見せず、7、8回を3者凡退に切ってとった。そして最終回、高橋光は先頭打者をヒットで出すも、次打者を空振り三振、そして最後はセカンドゴロに打ち取り、4−6−3のダブルプレーで締めた。無失策と守備でもエースを盛り立てた前橋育英。明日の決勝では初出場初優勝を狙う。

 横瀬、3安打9奪三振完封
花巻東(岩手)    0 = 000000000
延岡学園(宮崎)  2 = 00000200×

 延岡学園が今大会初先発の“背番号1”の快投で、初の決勝進出を果たした。延岡学園・横瀬貴広、花巻東・中里優介の両3年生左腕の先発となった準決勝。立ち上がりは、ともにゼロで抑えたが横瀬が25球、中里が8球と対照的な球数を投じた。それでも横瀬は2、3回を三者凡退に封じるど、尻上がりに調子を上げていく。対する中里は3、4回は得点圏にランナーを出しながらも、要所を締め無失点。試合は投手戦の様相を呈していった。

 5回表、それまで1安打ピッチングの横瀬がピンチを招く。先頭の山下駿人(3年)にヒットを許すと、次打者のバントで打球が横瀬の目の前に転がってきた。ゲッツーも狙える当たり。しかし横瀬は捕球する際に足を滑らせ、さらに一塁への送球も逸れてしまう。無死一、二塁。ここから延岡学園の左腕エースが踏ん張る。

 花巻東の打者が送りバントを失敗し、1死一、二塁となった。なおもピンチは続く。ここで中里を外角のストレートで空振り三振を奪うと、続く1番・八木光亘(2年)に対しても、力のあるボールでバットに当てさせなかった。マウンドで跳び上がって、ガッツポーズ。横瀬は2者連続三振にきって取り、最大の危機を脱した。

 横瀬の力投に打線が応えたのは6回裏。1死から3番の坂元亮伍(3年)のセンター前ヒットと盗塁で得点圏へとランナーを進めた。2死となって迎えるのは今大会7打点と好調の5番の濱田晋太郎(3年)。濱田は中里のストレートをライトへ弾き返す。坂元が三塁ベースを蹴り、ホームイン。延岡学園が、ついに均衡を破り待望の先制点を奪った。

 さらに打席には、今大会初スタメンに起用された田中祐樹(3年)。カウント3−1からのスライダーに巧くバットを合わせた。打球は左中間を破るタイムリースリーベース。抜擢した延岡学園の重本浩司監督も「力があっても出れなくて、うずうずしていた。文句も言わず努力していた結果」と殊勲の3年生を褒め称えた。

 2点の援護をもらった横瀬は、これで十分とばかりに勢いに乗る。緩いカーブとストレートを軸に「リズム良く、相手に考えるスキを与えなかった」と、自らが振り返るテンポのいい投球で相手に得点を許さなかった。9回の最後のバッターには「完全に狙ってました」と、外角の直球で三振を奪いシャットアウト勝ち。重本監督が「ここまで投げるとは思わなかった」と驚く3安打9奪三振の好投だった。九州地区で唯一甲子園での優勝経験がない宮崎県。県勢の初の優勝まで、あと1勝と迫った。

 一方、花巻東が敗れ、またしても東北勢の悲願は叶わなかった。花巻東のキープレイヤーである千葉翔太(3年)は4打数ノーヒットと完璧に封じられた。この試合までは打率7割、出塁率8割と驚異的な数字を残していた。準々決勝では相手投手に1人で41球を投げさせるなど曲者ぶりを発揮したが、この日の横瀬が投じたのは10球。持ち味を完全に消された。日大山形とともに快進撃を見せた東北勢だったが、優勝旗を手にするのは来年以降に持ち越しとなった。