(写真:記者会見でポーズを決める井上<左>とドネア)

 3日、ボクシング・世界バンタム級3団体統一戦(7日・さいたまスーパーアリーナ)の記者会見が横浜市内で開かれ、WBAスーパー&IBF王者の井上尚弥(大橋)とWBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)が意気込みを語った。

 

 ついに4日後に迫った因縁のリマッチ。厳しい面差しで登壇した二人のチャンピオンは、ともに「4団体統一」を見据えた。机上に並んだ赤(IBF)、黒(WBA)、緑(WBC)の3本のベルトを前に、「よりモチベーションが高くなった」と井上。2年7カ月ぶりのドネア戦を、こう位置づけた。「バンタム級での4団体統一という目標に向けて、自分の中では通過点に過ぎない」。一方のドネアも「キャリア最大の一戦になると確信している。勝って、いまだ達成できていない4団体統一という目標に近づきたい」と軌を一にしている。

 

 2019年11月7日、階級最強を決めるWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の決勝で両者は初めて拳を交えた。戦前、イギリスのブックメーカーが軒並み勝利オッズ1倍台をつけるなど、井上の圧倒的有利が予想された一戦は、フルラウンドまでもつれ込む死闘となった。2ラウンドで井上は右まぶたをカット。5階級制覇王者を相手に、序盤から“片目”だけでの戦いを強いられるも、最後は血染めの“モンスター”が判定で勝利を飾った。周囲はこの激闘を「ドラマ・イン・サイタマ」と呼んだ。

 

 続編の主役はどちらになるのか。井上は19年のドネア戦後、3度の防衛戦をすべてKOでクリア。ドネアも負けじと、ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)、レイマート・ガバリョ(フィリピン)といった実力者をKOで連破した。井上は、第1戦からのドネアの変化について、「バンタム級の戦い方、体重にフィットしてきている」と冷静に分析する。

 

 男子では史上9人しかいない4団体統一王者へ——。井上の返り討ちか、ドネアのリベンジか。極上の“前哨戦”が、刻一刻と近づいている。

 

(文・写真/古澤航)