ジャイアンツのバリー・ボンズが日本時間8月8日、通算756本塁打を記録し、ハンク・アーロンが保持していたメジャーリーグ通算最多本塁打記録を31年ぶりに更新した。
 記念すべきインタビューでボンズは興味深いことを言った。
「父がよく言っていた言葉を思い出した。重心を後ろに乗せろ、と言っていたのをね」

 ボンズが口にした「父」とは往年の名プレーヤー、ボビー・ボンズのことである。現役時代、30本塁打30盗塁を5回もマークしている。全盛時の山本浩二(広島)や秋山幸二(西武−ダイエー)が「和製ボンズ」と呼ばれたことでも明らかなように、攻走守三拍子揃ったオールラウンドプレーヤーだった。
 メジャーリーグではボンズのように父子二代で活躍した例が少なくない。通算590本塁打(8月14日現在)のケン・グリフィー・ジュニア(レッズ)の父親は1970年代最強のチーム「ビッグレッドマシン」と呼ばれたレッズで活躍したケン・グリフィー・シニアだ。

 ナ・リーグのホームラン王争いで、目下トップを走るプリンス・フィルダー(ブリュワーズ)の父親は日本の野球ファンにもなじみの深いセシル・フィルダー。阪神で活躍し、メジャーリーグに復帰してからは2年連続で本塁打、打点の2冠に輝いた。

 と、このようにメジャーリーグでは2代に渡ってファンを魅了する父子がたくさんいるが、日本ではとんと聞かない。長嶋茂雄氏の息子も野村克也氏の息子もそれなりによくやったが、偉大な父親と比べるのは酷というものだ。

 二世が活躍できない大きな理由の一つとして、学生野球憲章の第10条をあげたい。平たくいえばプロ野球選手やOBは息子といえども指導してはいけないのだ。こんな不条理なルールがあるだろうか。独善的なアマチュアリズムの弊害と断じざるをえない。

<この原稿は07年9月1日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>

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