ジャパン、7点差負け。オールブラックス戦初勝利に届かず ~リポビタンDチャレンジカップ~
29日、「リポビタンDチャレンジカップ2022」が東京・国立競技場で行われ、日本代表(ジャパン)がニュージーランド代表(オールブラックス)に31-38で敗れた。一時は4点差に迫る場面もあったがオールブラックス戦初勝利に、惜しくも届かなかった。
王国の背中は見えたが、勝利を掴むまでは至らなかった。元オールブラックスのジェイミー・ジョセフHCは「勝てるところまできたが、届かなかった」と振り返った。新国立最多6万5188人の観衆に金星は見せられなかったが、ジャパンの成長が窺えた一戦となった。
31-69で敗れた4年前は若手中心のオールブラックス。今回もLOサム・ホワイトロック、FLアーディー・サヴェア、バレット3兄弟(SO/FBボーデン、ユーティリティBKジョーディー、LOスコット)、WTB/CTBリーコ・イオアネ、WTB/FBウィル・ジョーダンを欠き、ベストメンバーではない。だが、LOブロディ・レタリック、FLサム・ケイン、SOリッチー・モウンガら主力級を揃え、23人の通算キャップ数(試合前時点)は800近い。ジャパンの387と比べても、倍以上のテストマッチ経験がある。
だからといって過度にリスペクトする必要はない。「1週間、勝つという自信を持って準備をし、グラウンドに立った」とキャプテンのHO坂手淳史。FL姫野和樹は「リスペクトはするが恐れることはなかった」と語った。オールブラックスがウォークライ(戦いの舞)のハカを踊る際にも、センターラインに横一列で迎えた。
11分、オールブラックスに先制されたが、8分後のPGをSO山沢拓也が決めて4点差に詰めた。2トライ2ゴールで一時は3-21と18点差まで広げられた。
37分、山沢が“足”で魅せた。CTBディラン・ライリーが右サイドタッチライン際からボールを前に蹴り出すと、相手がボールを処理に手間取っている間、山沢がドリブル。ボールを拾ってインゴール右隅に飛び込んだ。「正直ラッキーだった」と本人は口にしたが、山沢の持ち味が存分に発揮された場面だった。山沢は右端でのコンバージョンキックを成功した。
終了間際には速いパスワークでオールブラックスを翻弄。最後は左サイドタッチライン際を駆け抜けたライリーのオフロードパスを受けたSH流大が抜け出してトライを挙げた。山沢が再びコンバージョンキックを成功し、17-21でハーフタイムに入った。
後半開始早々、オールブラックスに1トライ1ゴールで再び点差を2桁に戻された。15分にはインゴール目前まで迫られたが、姫野が渾身のジャッカル。ピンチを脱し、流れを変えてみせた。
すると1分後。相手のボックスキックをLOワーナー・ディアンズがチャージ。弾いたボールがそのまま手に収まり、そのまま独走してインゴール左中間に飛び込んだ。コンバージョンキックを途中出場のSO李承信が決め、24-28と詰め寄った。
21分に1トライ1ゴールを失ったものの、26分にレタリックがブレイクダウンの際の危険なタックルでレッドカード。一発退場となり、残り約15分をジャパンは数的有利で戦うこととなった。そこから敵陣でプレーする時間が増えたが、反則やミスでスコアできない。
39分に姫野のトライと李のコンバージョンで4点差。しかし反撃はここまでだった。キックオフからは自陣を脱することはできず、最後は反則で万事休す。モウンガのPGでトドメを刺され、31-38でノーサイドとなった。7点差はオールブラックス戦過去最小点差だ。テストマッチでは7月のフランス代表戦に続き、ティア1に善戦となった。ジョセフHCは「たくさんいいところがあった」とした一方で、「ティア1に勝つためにはミスを減らさなければいけない」と課題を挙げた。
選手たちも“勝てる”という手応えがあったようだ。「最後の最後まで勝てるという気持ちだった」とディアンズ。姫野が「(4年前と比べても)強くなっている実感がある。メンタリティーがすごく変わった。ハカに物怖じせず勝ちにこだわった」と口にすれば、FLリーチ・マイケルも「多少のミスはあったが、やっていることは間違えていなかった」と振り返った。
今後ジャパンはヨーロッパに渡り、イングランド代表、フランス代表と敵地でティア1勢に挑む。
(文・写真/杉浦泰介)