いよいよカタールW杯が幕を開ける。初の中東開催となった今大会は、冬の時期に行われる。実施期間は28日(通常は32日)で、グループリーグ(GL)は中3日で回すという、これまで以上にタイトな日程が組まれた。選手登録26人、交代枠5人。各国・地域の起用法も問われる大会となりそうだ。異例ずくめの大会を当HPスタッフライターが展望する。

 

 7回目のW杯に臨む日本代表は、過去6大会でGL敗退と決勝トーナメント進出を繰り返してきた。98年フランス=GL敗退、02年日韓=決勝T進出、06年ドイツ=GL敗退、10年南アフリカ=決勝T進出、14年ブラジル=GL敗退、18年ロシア=決勝T進出。その流れで言えば今回GL敗退。ジンクスを断ち切ってほしいところだ。

 

  ドイツ、コスタリカ、スペインと日本にとっては厳しい組に入った。ドイツとスペインは優勝経験国で、今大会でも優勝候補と見る向きもある。日本GL突破のカギは初戦のドイツ戦。FW前田大然、MF伊東純也らスピードのあるアタッカーが、ドイツの屈強なDF陣の裏を突き、GKマヌエル・ノイアーの守るゴールをこじ開けたい。初戦でジャイアントキリングを起こし、勢いに乗りたい。

 

 ポジティブなデータも紹介しておこう。森保一監督就任以降 、58試合を戦い、39勝8分け11敗と引き分けを含めても勝率6割7分2厘である。開催地のカタールといえば日本にとっては“ドーハの悲劇”のイメージがあるが、その後は2011年のアジアカップを制するなど、8勝2分け(PK戦勝利1を含む)と負け知らずだ。日本にとっての鬼門ではなくなっていると言っていいだろう。

 

 大会全体を見渡すと、ブラジルが優勝候補の筆頭だ。タレントは豊富。ネイマール、ロドリゴ、ヴィニシウス・ジュニオールらアタッカー陣はもちろん、カゼミーロ、ファビーニョなど守備で気を利かせられる中盤の選手がいるのも強みだ。最多優勝回数を誇る王国に死角は見当たらない。2002年日韓W杯以来、6度目の優勝トロフィーを掲げる可能性は高い。

 

 5大会連続出場のメッシ、ロナウドはおそらくW杯優勝へのラストチャンスとなる。代表での通算得点は前者が95得点と後者が117得点。後世に名を残すであろう稀代のゴールハンターのプレーにも注目だ。

 

(文/杉浦泰介)

 

 サッカー日本代表のカタールW杯初戦のドイツ戦があと3日後に迫った。元々この大会は事前合宿を行えない。加えて残り3日でできることは限られている。

 

 やれることがあるとすれば1対2で敗れたカナダ戦の検証くらいだろう。それでもドイツ相手に勝ち点を1つでも拾うためには必要な作業である。

 

 まずは前線での守備面。35分はハイプレスが機能した。敵陣左サイドからMF久保建英(レアル・ソシエダード)が相手センターバックに対して縦のパスコースを遮断し、GKに戻させる。そのまま久保が2度追いしGKにプレスをかける。GKは逃げるように右サイドに開いたDFにパスを出すが、そこにはMF南野拓実(モナコ)がプレスをかけ、ボールホルダーは自陣で切り返してかわそうとするが、久保がボールを奪取し、シュートにつなげた。38分にもハイプレスが奏功し、高い位置でボールを奪えていた。

 

 裏を返せば課題は、ハイプレスがしっかりと機能したのがこの2つだけだった点だ。偶発的でなくこのかたちを必然的につくれるようにならないと本番では厳しいだろう。しっかりプレスをかける位置と追い込む角度を選手の現場判断だけでなく、スタッフ陣からの明確な指示がほしいところだ。そうすれば、前線の人が変われど、再現性を持ってプレーができるはずだ。

 

 90分フルでハイプレスをかけ続けるのはほぼ不可能。ブロックをしっかり敷く時間、ハイプレスに移行する時間とどこで使い分けるかをミーティングで詰める作業はこの3日間でも行えるはず。そうとなれば、先発をすでに選手に伝えてしまうのも1つの策である。今の日本代表は選手間の話し合いでプレスの設定などが決められる割合が高い。今の段階で起用メンバーを伝達することもデメリットばかりではないだろう。

 

 カナダ戦終盤には3-4-3を試せたこと自体は小さな収穫と言えるがプレスの掛け方、相手DFの裏の狙い方など徹底的にすり合わせをした上でしてドイツ戦に臨みたい。初戦で勝ち点を拾えれば、精神的にも優位に大会を進められる。仮にGLを突破できれば、ラウンド16でベルギーと当たる確率が高い。4年前のリベンジを果たし、重く微動だにしなかった扉をこじ開けてほしい。

 

(文/大木雄貴)