(写真:復帰した姫野<中央>が好プレーを見せるなど明るい材料も ©JRFU)

 現地時間17日、ラグビーW杯フランス大会のプールD・世界ランキング14位の日本代表(ジャパン)が同6位のイングランド代表に12-34で敗れた。後半15分まで競った展開だったが、イングランドに3トライを奪われ突き放された。イングランドはプール戦2連勝。4トライでボーナスポイントを獲得した。ジャパンの次戦は28日(日本時間29日)、世界ランキング11位のサモア代表と対戦する。

 

 2015年イングランド大会の“ブライトンの奇跡”、19年日本大会の“静岡の衝撃”に続き、ニースでのアップセットを狙ったが、ラグビーの母国はそれを許してくれなかった。

 

 ジャパンは前戦からスタメン4人を入れ替えた。HO堀江翔太、FLピーター・ラブスカフニ、No.8姫野和樹、CTB長田智希。姫野の復帰により、ジャック・コーネルセンはLOでの起用となった。対するイングランドはPR2枚を替え、前戦退場のFLトム・カリーに代わり、No.8ベン・アールがFLに移り、ルイス・ルドラムがNo.8を任された。

 

 開始早々ジャパンにアクシデントが続く。1分、イングランドのキックを自陣インゴール内で処理したFBセミシ・マシレワがボールこぼし、ノックオン。いきなりピンチを迎える。相手ボールスクラムは耐えたものの、その後のプレーでペナルティーを犯し、SOジョージ・フォードにPGを決められた。3点を先制された数分後、マシレワが自陣でロングキックを蹴った際に右足を痛めた。代わりにレメキ ロマノ ラヴァがピッチに入った。

 

 イングランドはスクラム、ラインアウトのセットプレーを得意とするが、ジャパンのFWパックは耐えた。スクラムはほぼ互角で前進をさせなかった。するとジャパンも15分、23分とSO松田力也がPGを確実に決めて6-3と逆転に成功した。初戦からプレースキックは抜群の安定感を見せる。

 

 しかし25分、自陣でのラインアウトからボールを奪われ、ルドラムにインゴール左中間に飛び込まれた。フォードのコンバージョンキックを決められて6-10とひっくり返された。前半は松田とフォードがさらにPGを1本ずつ成功し、9-13で終えた。ハイパントで長身バックスリーを擁するイングランドはボールを保持した。それでもジャパンは相手の得意とするセットプレーでは互角以上の戦いを見せた。

 

 後半に入っても、いいディフェンスからジャパンが勢いに乗る。開始早々にLOアマト・ファカタヴァがタックルでピンチを防ぐと、3分には姫野がジャッカルでボールを奪取した。11分、相手ボールのラインアウトをコーネルセンがプレッシャーをかけてボールを奪った。13分には、敵陣に侵入し、相手のノット・ロール・アウェイを誘った。松田がPGを決め、12-13と1点差に詰めた。

 

 ところが不運な失点で流れはイングランドに。16分、フォードのパスをPRウィル・スチュアートが捕球できない。乱れたボールがPRジョー・マーラーの頭に当たり、前方にこぼれた。一瞬、止まってしまったジャパンの守備陣。ボールを拾ったFLコートニー・ローズがゴールポスト真下にボールを置いた。TMO(ビデオ判定)の結果、ノックオンはなくトライが認められた。フォードのコンバージョンキックも決まり、12-20と突き放された。

 

 ジャパンは自陣でのWTB松島幸太朗のビッグゲインからチャンスをつくるが、19分にSH流大のパスをPRヴァルアサエリ愛がこぼしてしまい、痛恨のノックオン。すると26分、フォードの絶妙なキックパスがFBフレディー・スチュワードに渡り、インゴール左隅に叩き込まれた。利き足ではない左での正確なキックパスを通された。

 

 フォードにコンバージョンキックを決められ、2トライ2ゴールでは追いつけない点差に。その後も自陣に押し込まれる苦しい展開となった。終了間際に1トライを加えられ、4トライ以上によるボーナスポイントを獲得された。競った展開から先に抜け出していれば、イングランドにプレッシャーをかけられていた。司令塔フォード、ハイボールキャッチのスペシャリストでもあるスチュワードというキーマンを封じきれなかった。掴めそうで掴めない背中だった。

 

(文/杉浦泰介)