16日、サッカー日本代表候補は千葉県内でのトレーニングキャンプの3日目(最終日)で流通経済大学と30分ハーフの練習試合を2本行った。攻め込まれる場面が目立ち、決して満足とはいえない内容だったが、それぞれ1−0で辛くも勝利を収めた。
(写真:流経大に攻め込まれる日本代表)
 手放しでは喜べない打ち上げになってしまった。
 今回の練習試合では2ゲームとも4−3−3のシステムで3トップに2人のオフェンシブMFを置く攻撃的布陣で臨んだ。大学生相手に大量得点を奪って、合宿の最終日を締めるはずだった。

 だが、いざ試合が始まってみると、運動量が少なく、流れるような攻撃ができない。ポジションチェンジは数えるほどで、前線のくさびを受けるプレーや後方からのオーバーラップは影を潜めた。これまでの2日間で徹底して練習してきたサイドで数的優位をつくる攻撃は見られたが、最後のフィニッシュは精度を欠いた。

(写真:第1試合でセンターバックの一角に入った中澤)
 第1試合では後半開始後にFW播戸のスルーパスに抜け出したFW佐藤寿が右隅に流し込み、第2試合では後半終了間際に左サイドからの折り返しをMF阿部が右隅へ決めたものの、大学生相手に120分間でこの2ゴールのみ。オシム監督は「トレーニングとゲームは別物。チャンスの数は非常に多かったが、それを決められないというのは昨日今日始まった問題ではありません」と話したが、得点力不足は依然として深刻な問題といえそうだ。

 逆に流経大から攻めこまれる場面が目立った。安易なパスミスからカウンターを食らうだけでなく、1対1で後手に回ったシーンもあった。特に第2試合では、結果的にファウルで2度ともノーゴールとなったものの、セットプレーから2度ネットを揺らされた。「あれだけ攻められてしまうと……」と今回の合宿で初召集されたDF小宮山は練習後、深刻な表情を浮かべた。

 選手たちが動きに精彩を欠いた理由の一つは過密スケジュールとある。「連戦ということもあって、後半は足が止まってしまった。なかなか思うようにボールも落ち着かなかった。そういう意味で難しい部分はあったと思う」(MF遠藤)。浦和、川崎はACLとリーグ戦で4月半ばから約1ヶ月間で10ゲームを、その他のJクラブもナビスコカップとリーグ戦で4月初旬から約1ヵ月半で11ゲームというタイトな日程をこなしている。選手たちの疲労もピークに達しつつある。

(写真:攻撃を組み立てる遠藤)
 一方で、忙しいスケジュールの合間に縫ってでも、選手同士が一緒にピッチに立つ時間を増やさなければ、連係が熟成されることはない。逆にいえば、どんなに疲労していても同じピッチでプレーすることで相互理解が深まっていく。オシム監督は「一番大切なのは選手たちがグラウンドの上でどうコミュニケーションをとるか。選手たちはそれぞれ所属クラブが違うが、その中でどうやって代表で息の合ったプレーをするかという点が大事だ。その点については、選手たちは精一杯の努力をしている」と話し、遠藤も「一番大事なのは互いが互いを理解すること。それはしっかりとできていたと思う」とコミュニケーションの進歩を強調した。
 
 オシム監督はこうも語った。「よいチームにはオートマティズムが必要。今は新しい選手を毎回呼んで付け加えている段階だから、オートマティズムがすぐにできるとは思っていません。でも、同じチームができるだけ長い時間を共有してプレーすることが必要なんです」。6月初旬にはキリン杯が、そして7月にはアジア杯が控える。練習試合自体は決して満足のいく内容ではなかったが、今回の合宿で深めた相互理解の意味は間近に迫った大会で明らかになりそうだ。

<日本代表候補 先発メンバー>
【第1試合】
GK 
川口 能活
DF(左から)
駒野 友一
坪井 慶介
中澤 佑二
森 勇介
MF
鈴木 啓太
遠藤 保仁
太田 吉彰
FW(左から)
佐藤 寿人
矢野 貴章
播戸 竜二

【第2試合】
GK 
川島 永嗣
DF(左から)
村井 慎二
近藤 直也
今野 泰幸
小宮山 尊信
MF
阿部 勇樹
中村 憲剛
藤本 淳吾
FW(左から)
黒津 勝
巻 誠一郎
杉本 恵太
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