愛媛FCの選手たちが、ボランティア・スタッフの仕事を買って出てくれた。
 4月11日(水)、J2リーグ戦・第8節となる愛媛FCのホームゲーム「愛媛FC対セレッソ大阪」の一戦において、一般のボランティア・スタッフに混じり、この日の試合に出場しない控え選手(試合登録メンバー外の選手)が、ボランティア・スタッフの仕事を手伝ってくれたのである。
(写真:セレッソ大阪ゴール前での攻防)
 一般公募で集まって頂いているボランティア・スタッフの皆さんの作業は、公式戦運営の準備、場内整理や場内清掃、パンフレット配布や物品販売など運営サイドにとってはどれも重要で大変手間のかかる仕事ばかりだ。

 その忙しさゆえ、当日の試合を観戦することはできない。ボランティアというだけに、見返りもほとんどない。サポーターや支援者という立場の中でも、最も過酷な支援活動のひとつと言えるのかもしれない。

 主に応援活動を行っている私たちもボランティア・スタッフの皆さんのおかげで、公式戦で応援活動に思う存分に専念でき、またゲームを楽しめる。彼らに対しては本当に感謝の気持ちでいっぱいなのである。
 
 しかし、そういった過酷な条件が理由だろうか、今シーズンは昨年に比べ、ボランティア・スタッフの数が減少傾向にある。特に今日のような平日の公式戦開催日には、仕事や勉学などの都合で参加者は少なくなってしまっている。

 この状況には、愛媛FC事務局も頭を痛めている模様だ。一方で、チームにとって重要なホームゲームの観客動員数も最近は伸び悩んでいる。対戦相手や開催日時、チームの成績も関係しているとは思うが、このところ落ち込んでいるのが実状だ。

 もちろん、事務局や支援団体も黙っているわけではなく、観客動員に向けて、様々な対策をとり、スタンドの空席を埋める努力をしてくれてはいる。だが、爆発的な伸びは、期待できそうにない。
 
(写真:愛媛FCがセレッソ大阪のゴールに襲い掛かる) そういった運営側の苦悩を心配してくれていた愛媛FCの所属選手たちが、自ら判断して、今節、「ボランティア・スタッフの手伝い」という行動で気持ちを表現してくれたのだ。「ベンチ入りを逃し、試合に出場することはできないが、チームのために何か行動したい!」という熱い思い「一般のボランティア・スタッフを手助けし、支援者の目線でサポーターやファンに接することで少しでも今後の観客動員につながれば……」と感じてくれたこと。選手たちの気持ち全てが、支援者にとっては嬉しく感じられるものだ。
 
 愛媛FCが四国リーグやJFLで活動していた頃、街頭での署名活動やチラシの配布などのサポーター活動には必ず選手たちが参加してくれたものだ。愛媛FCは、大きな組織でもなければ、財力のある支援企業がバックアップしてくれるクラブでもない。

 地域の人々や支援者自らが支える「県民クラブ」なのだ。それはチーム、選手、スタッフ、サポーターや支援者の皆がチカラを合わせて前進、成長するクラブ。言い換えるなら、皆の意志で自由にベクトルを選択し、それを実現できるクラブなのである。

 クラブの状況を良くすることも、悪くすることも自分たちの自由であり、責任を伴うものだとも言える。しかし、そんなクラブだからこそ、様々な人に愛され、新たに生まれる夢や希望があると思えるのだ。

 今回、ボランティア・スタッフの手伝いをしてくれた選手たちは、愛媛FCの歴史を踏まえて行動してくれたのかどうかは定かではないが、皆でチカラを合わせるという愛媛FCの伝統を少しでも感じとってくれていると有り難い。
 
 この日、セレッソ大阪に敗れ、愛媛FCはまたしても2007シーズンのホームでの初勝利を手にすることができなかった。支援者とともにボランティアの作業を終えた選手たちが、試合に出場した選手たちへ、作業を通じて感じたことを何か一つでも伝えてくれたならば、チームとチームを支える人々との結束力は一段と高まるに違いない。そうなれば、ホームでの初勝利も遠い話ではないと思えるのだ。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから