スッタモンダの末に今秋のドラフトから裏金の温床とみなされてきた「希望枠」が撤廃されることになった。
 多くのメディアは「一歩前進」と評していたが、果たしてそうか。下位チームから順番に指名する完全ウエーバー制を導入しない限り、不正は後を絶たないだろう。

 それにしてもお粗末だったのが根来コミッショナー代行の対応だ。「セの大球団も“希望枠を使わない”と言っているから」。これはいったい何なんだ!? 「セの大球団」とは巨人のことだろう。つまり巨人が折れたから希望枠撤廃ということなのか。
 これじゃ、まるで巨人の操り人形だな。巨人の利益代弁者と言われても返す言葉がないんじゃないかな。

 希望枠という名の逆指名制度を存続させるため、今回いくつか“風説の流布”があった。
 そのきわめつけが「希望枠が廃止されたら、有望なアマチュア選手がアメリカに流出する」という根も葉もないウワサ。
 はっきり言う。非志望球団からの指名を理由に入団を拒否し、いきなりメジャーリーグの扉を叩いた選手がこれまでいただろうか。そういう選手が続出しているのなら、「希望枠」の存続もやむなしとなるが、実際にそうした例は一例もない。
 にもかかわらず、「アメリカに行くぞ、アメリカに行くぞ」と叫ぶのはオオカミ少年ではないか。そこまでして不正の温床を温存したい理由は何か。つまりそこにメスを入れられたくない“利権”があるからだろう。

 もうひとつ気になる物言いがある。「ウエーバー制は職業選択の自由に抵触する」。これは一理ある。入口を締め切った以上は出口を早く開けなければならない。そのために「FA権の取得期間を短縮しろ」との主張には耳を傾けたい。
 しかし「職業選択の自由」を口にする者が「アメリカに行かれたら困る」では論理が破たんしてはいまいか。元東京高検検事長の根来コミッショナー代行の見解を聞きたい。

<この原稿は07年4月23日号「週刊大衆」に掲載されています>

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