グループ首位をかけた大一番で、受けて立ってしまいましたね。3月26日、日本代表は南アフリカW杯アジア地区3次予選第2戦でバーレーン代表に敗れ、グループ2位に転落しました。どうして、もっとアグレッシブに戦うことができなかったのか。非常に残念ですね。

 バーレーンは序盤からロングボールを蹴り込んで、押し込んできました。それをしのいだ点は評価したいですが、前へ出る意識が低かった。特に左右のウイングバックが機能していなかったですね。マークの受け渡しが上手くできず、最終ラインに組み込まれていた。それでは、攻撃の枚数が足りない。

 MF遠藤保仁を先発から外したことも裏目に出ましたね。岡田監督はバーレーンが序盤から攻勢に出ることを予想していたはず。その攻撃に耐えて、相手の体力が落ちたところで遠藤を投入して、勝負に出るつもりだったのでしょう。しかし、遠藤をピッチに送り込み、攻撃のリズムが出始めたところで、カウンターで得点を許してしまった。GK川口能活の判断ミスも響きました。

 今の岡田監督には迷いが見えます。それはコメントを聞いていても明らかです。岡田監督の長所である緻密な部分が今のチームからは感じることができません。選手個々が意識を変えることはもちろんですが、戦術を徹底して、チームのベクトルを一本化する必要があるでしょうね。

 バーレーン戦は本当に勝っておきたかった試合ですが、この段階で負けてよかったとも思います。3次予選はここで一休みします。再開する6月まで時間がある。悪い流れを変える上でちょうどいいタイミングではないでしょうか。

 いずれにせよ、岡田監督は今回の敗戦で3次予選が簡単に突破できないことを再確認したでしょう。不在だったMF中村俊輔やMF稲本潤一といった欧州組の必要性も痛感させられました。6月2日の第3戦オマーン戦までに、選手選考を含めた改革が求められるでしょうね。

<好スタートを切った王者・鹿島、出遅れた浦和>

 私の古巣である鹿島アントラーズが好スタートを切りました。昨季はスタートで出遅れましたが、今季は開幕4連勝。JリーグでもACL(アジアチャンピオンズリーグ)でも結果を残しています。今のチームは、リーグと天皇杯を制した昨季とメンバーが替わっていません。チームとして熟成度が増し、タイトルを獲得した自信が感じられますね。

 私が開幕前に不安視した攻撃陣はしっかりと結果を残しています。4試合で7ゴールのFWマルキーニョスはもちろんのこと、昨季は低調だったMFダニーロが途中出場ながら良いアクセントになっている。
 選手層も厚くなっています。それはDF大岩剛とDF岩政大樹の“2枚岩”が出場停止だった開幕戦の対コンサドーレ札幌を見れば、よくわかります。代役を務めたDF中後雅喜とDF伊野波雅彦は急造コンビながら、2人でよくコミュニケーションをとって、札幌を完封しました。“2枚岩”に比べて、高さ、強さでは見劣りしますが、スピードを生かして、よく守っていましたね。
 今はチームとして順調にきています。主力選手の故障など余程のことがない限り、今のアントラーズは崩れないと思いますね。

 その一方、スタートにつまずいたのは昨季のアジア王者の浦和レッズです。16日、リーグ戦開幕2連敗の責任を問う形でホルガー・オジェック監督を電撃解任しました。それは仕方のないことだと思います。昨季はACLを制したものの、それで気が抜けてしまったのか、リーグ戦の方を逃してしまいました。リーグ優勝できなかった時点で、フロントは解任を考えていたはずです。そうでなければ、あそこまで早い段階で解雇されるはずがない。

 これからレッズはゲルト・エンゲルス新監督の下でどう立ち直っていくか。昨季のアントラーズのように、盛り返して欲しい。豊富なタレントを揃え、熱狂的なサポーターを持つ彼らが上位にいなければ、リーグは盛り上がりませんからね。今後の躍進に期待しています。

● 大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://business2.plala.or.jp/kheights/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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