12月5日から香港で行われた東アジア競技大会で、ボートの武田大作選手(ダイキ)は、男子軽量級シングルスカルで6分44秒93の好タイムを残し、優勝をおさめた。2009年も残すところ約10日。ダイキスポーツにとって2009年はどんな1年だったのか。ボート武田選手はもちろん、ダイキ弓道部、そして今年より新たに始動したダイキジュニアゴルフスクールの活動を振り返りたい。
(写真:今年はシングルスカルで世界選手権4位などの成績を残した武田)
<武田、36歳でさらなる進化を実感>

 軽量級ダブルスカルで13位に終わった北京五輪から1年。武田は3年後のロンドン五輪を見据え、今年は「準備、勉強の年」と位置づけた。「出場権を得るための前年のシーズンを考えると、もう残されているのは2年。思ったより時間はないですよ。世界で勝てないなら出る意味がない。年齢も年齢ですから1年1年、1日1日が勝負なんです」。そのために取り組んだのは、まず自身のレベルアップだ。具体的には「ワンストロークで進む距離を長くすること」をテーマにシングルスカルで練習を重ねた。

 ただ、春先は調子が上がらなかった。国内で無敵の強さを誇った第一人者が4月のレースではまさかの敗北を喫した。しかし、5月の朝日レガッタ(琵琶湖漕艇場)、Japan Cup(戸田ボートコース)を優勝して復調すると、6月からは海外へ。出発前は「シングルスカルで出場するのは初めて。だから楽しみです」と笑顔で語っていたものの、内心は重大な決意を胸に秘めての遠征だった。

「今年、世界で戦えないとわかったら、引退しようとも考えていました」
 進退を賭けて挑んだ世界の舞台はワールドカップ第2戦(ドイツ・ミュンヘン)で4位。8月の世界選手権(ポーランド・ポズナン)でも6分59秒25のタイムで4位に入る。五輪翌年のため、ダブルスカルの強豪が相次いでシングルスカルで出場するハイレベルな状況下でも、武田は世界と互角に渡り合った。

「まだ世界のトップレベルで戦えるという手ごたえはつかめましたね。いい経験になりました。35歳になっても新たな発見もあってうれしかったです」
 帰国直後の9月の全日本選手権大会(戸田)ではシングルスカルで4連覇を達成。後続に17秒差をつける圧勝だった。愛媛県代表として出場したトキめき新潟国体も制した。

 世界選手権では3位との差は3秒。その差を埋め、世界で勝つための課題も見えた。
「中盤以降、スピードが上がらなかったんですよ。世界の選手は勝負どころを知っていて、そこで強さを発揮する。たとえば優勝したニュージーランドの選手は準決勝で3位通過でした。僕は彼に勝って2位通過だったにもかかわらず、決勝では逆に差をつけられてしまった」
 30代後半を迎え、瞬発力を上げることは難しい年齢になりつつあるが、それでもスピードを磨かなければ世界の頂点には立てない。
「世界で1番を獲るところまでは質量ともに自分を高められなかったんです。来年以降は、この部分をもっと徹底してトレーニングしないと、世界で勝てないまま終わってしまいますね」

 迎えた今回の東アジア大会。武田はシーズンを締めくくるにふさわしいレースをみせる。満潮でコース内へ艇を後押しするように海水が流れ込み、風も順風という“アシスト”を味方につけ、6分44秒93の“世界最速タイム”でフィニッシュ。2位の中国人選手に10秒近い差をつけた。
「2位の選手は北京五輪で5位に入った実績があります。彼とどのくらいの勝負ができるか試したかった。シーズンの最後にいいスピード、いい感触でボートを運べました」
 この5日には36歳の誕生日を迎えた。「11月に体力測定をしたら、最大酸素摂取量の数値が今までで一番良くなっていたんですよ」。体力、技術ともにまだまだ成長の余地があると実感できた1年だった。

 2010年は五輪に向け、ダブルスカルを再開させる。ともにオールを漕ぐパートナーが見つかっていない点が悩みだが、1月の合宿では積極的に若手へ声をかけるつもりだ。5回目の五輪で最高の結果を出すための準備は着々と進行している。

<弓道部、来季こそ頂点へ>

 ダイキ弓道部は橋本早苗、小早川貴子の両選手が県代表の一員として2年ぶりの国体出場を勝ち取った。だが上位進出を狙った本番は遠的、近的ともに予選落ち。特に2004年には近的で国体制覇も経験した橋本にとっては、悔しさだけが残った大会となった。
「(小早川選手、松山大の北風磨理選手と県代表の)若い選手が実力を出せなかったのは事実です。でも力を発揮できる状況をつくれなかったのは私の責任。2人とも初めての国体だっただけに、もっと弓を楽しんでほしかった。楽な気分にさせてあげられなかったのは私の力不足です」
(写真:ダイキ弓道部の選手たち)

 11月から弓道部は新しい体制でスタートを切った。少数精鋭で、まず部内での競争意識を高めるなど、意識改革を図った。なお、石田亜希子が復帰し、将来の指導者を目指すこととした。改革の成果は徐々に表れている。同月に開催された四国勤労者弓道選手権(愛媛・砥部弓道場)では、ダイキの山内絵里加、原田喜美子、橋本組が団体優勝を飾る。個人でも橋本の1位を筆頭に、2位・小早川、3位・原田、4位・山内とダイキ勢が上位を独占した。捲土重来の機は熟しつつある。

 主将に就任した橋本は来季の目標を「国体での遠近制覇」に掲げた。「上位に残るところは射が落ち着いています。弓道は愛媛のお家芸といわれていたこともありますが、今は全国のレベルがあがっている」。頂点への道のりは容易ではないものの、会社のバックアップで環境にも恵まれている以上、弓も仕事も手を抜くことはできない。射即生活(弓道を日常生活に活かす)の実践――来年こその思いを込めつつ、今日も1本1本丁寧に矢を射る。

<ジュニア・ゴルフ、まずは基礎固め>

 18歳で史上最年少賞金王に輝いた石川遼を筆頭に、賞金女王の横峯さくら、諸見里しのぶなど、現在のゴルフ界を牽引するのは10〜20代前半の若手ゴルファーたちだ。そんな未来のスターを育成するため、この2月、ダイキジュニアゴルフスクールが愛媛に誕生した。現在、小学校2年生から中学校3年生までの男女20人がレッスンに励んでいる。
(写真:最大で18打席を確保できるスクールの練習場)

 2017年の愛媛国体での優勝を目指し、その時に主力となる子どもたちを育てる――スクールには大きな目的がある。レッスンのため、専用の練習拠点も確保した。ビーチバレー佐伯美香選手が昨季限りで第一線を退き、「ダイキヒメッツ」の活動が終了したため、松山市内の練習場をゴルフ仕様に改造したのだ。

 練習は基本的に平日が16時〜20時まで、土日は9時〜12時まで。専用の施設のため、毎日ボールを打てる点が強みだ。寒波の到来で日に日に冷え込みが激しくなる中でも、練習場に暖房設備はない。「ゴルフ場に冷暖房はない」との方針の下、暑い夏は大粒の汗を流しながら、寒い冬は手をかじかませながら生徒たちはレッスンを受けている。

 成果は早くも出始めている。10月に福島県のリベラルヒルズゴルフクラブで行われた第4回全日本小学生ゴルフトーナメントでは小学5年生の竹下桃夏さんが出場を果たした。スクールでは小学校中学年の生徒がもっとも多く、競い合ってみるみるゴルフの腕前を上げている。来年以降も大会での好成績が期待できそうだ。

「ただスコア、成績にはこだわらないようにしたいんです」
 スクールの宮崎順ゼネラルマネジャー(株式会社ダイキアクシス監査役)は、そう指導方針を説明する。
「まずはしっかり基礎を固めることが大事です。とにかく安定したフォームで思い切り振り切れるようになること。体力がつけば、飛距離は自然と出ます。生徒たちが小さくまとまらないように心がけています」

 開校2年目となる2010年は個々のレベルに応じ、さらにきめ細かい指導を目指す。スクールで重視するのは、子ども自身のヤル気。大々的に生徒は募集していないが、本当にゴルフで国体に出たい、プロゴルファーになりたいという夢があれば、いつでも入校を歓迎している。

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(石田洋之)
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