愛媛FC2010シーズンの開幕戦前日となる3月6日(土)、愛媛県総合運動公園内ニンジニアスタジアムにて、愛媛FCサポーターたちによる清掃活動が行われた。
「美しいスタジアムで、シーズンの始まりを気持ちよく迎えよう!」という趣旨の活動で、私たちサポーターにとっては、毎年恒例の行事となっている。この週末、寒さがぶり返している松山市。冷たく手がかじかむ中、観客席の固定ベンチシートや折りたたみ式シートを濡れ雑巾で丁寧に拭いて回る。泥や鳥の糞などが拭われ、輝きを取り戻した観客席を見渡すと、心地良い清涼感に包まれる一方、「いよいよ闘いの始まりだ」という気持ちの高揚も感じられた。
 翌日の3月7日(日)、J2リーグ2010開幕戦(第1節)となる愛媛FC対ファジアーノ岡山の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 降雨の不安と寒さで観客の出足が心配されていたが、フタを開けてみれば約5000人の大観衆がスタジアムへと詰め掛けてくれた。
 
 選手入場前、愛媛FCサポーターたちから「ツカモト! ツカモト〜!」と大きなコールが発せられる。それに呼応するかのように、岡山のサポーターたちからも「ツカモト!」コールが起こった。これはJ1の大宮アルディージャに所属する塚本泰史選手へ送られたエールである。

 先月、大宮アルディージャは塚本選手が現在、右大腿骨骨肉腫(右大腿骨の悪性腫瘍)という大病を患っている事実を発表した。足の病気ということで、選手生命をも脅かされてしまう悲痛な状況に突然陥ってしまった塚本選手。しかし、自分と同じ病気や、がんなどの難病を抱えている人々へ希望を与えるべく、3月中には手術を行い、この病気と闘っていくことをたくましく宣言している。
 クラブや立場は違えど、同じJリーグという舞台で闘っている仲間とも言える塚本選手へ向けて「その難病に打ち勝って欲しい!」との思いを込め、両チームのサポーターからエールが送られたのだ。
 
 バックスタンド側から吹き付ける冷たい風が体温を奪っていく中、時刻は午後4時を廻り、岡山のキックオフで開幕戦がスタートした。
 序盤、緊張からか敵陣内でうまくビルドアップできていない様子の愛媛FC。調子が上がらない中でも、時間経過とともにチャンスは巡ってくる。

 前半26分、愛媛によるセットプレーからのセカンドアタックで、ペナルティエリアに陣取るDF小原章吾選手が後方からのパスを足元に収め、素早くシュートを放った! しかし、ゴールポストにはじかれ先制ならず。直前のプレーがオフサイドとの判定で、入っていたとしても得点にはならなかったのだが、愛媛の連続攻撃を見ることができた良い場面だった。
 
 前半、相手の守備陣に手を焼いているのか得点機が少ない印象の愛媛FC。スコアは0−0のまま後半戦に突入した。そして、いきなり出ばなをくじかれる。
 後半4分、自陣ペナルティエリアでの味方のファウルから敵にPKを決められ、先制点を献上してしまったのだ。

 この失点で目が覚めたのか、その後、必死の反撃を試みる愛媛イレブン。
 後半27分、敵陣内の左サイドでパスを細かくつなぐ。そこから、ボールを受けたMF杉浦恭平選手が敵DFをかわしつつ、右足を豪快に振り抜き、ミドルシュートを放った! が、敵GKの必死のセービングで惜しくもゴールならず。
 
 後半38分、MF内田健太選手が敵ゴール前からのルーズボールを拾い、ペナルティアークから強烈なミドルシュートを放つ! 一瞬「決まった!」と思ったが、ボールはサイドネットへ突き刺さるに留まった。観客席からは大きな溜め息がこぼれる。
 
 後半もアディショナルタイムに入り、2分が経過。敵陣内の左サイドでMF田森大己選手が相手からファウルを受け、愛媛がフリーキックのチャンスを得た。ゴールまでは40メートル近く離れている位置。キッカーは内田選手。ボールをセットし、長い助走距離を取り、左足を豪快に振り抜く! 直接ゴール狙ったシュートだ! 弾丸と化したボールは、敵GKの伸ばした手の先を擦り抜け、敵ゴールへと迫るが、これまたギリギリ右外へ外れ、得点には至らなかった。
 
 選手たちによる必死の反撃も虚しく、時間は過ぎ去り、ついにはタイムアップ。最終スコア0−1で、愛媛FCの惜敗となってしまった。
 
 開幕戦の独特な雰囲気の中、先取点を決められ、固くなってしまった選手たち。ボールを奪い取り、キープしているにもかかわらず、失敗を恐れ、局面を打開できずにフィニッシュへ持ち込めないというような歯がゆいシーンも多く見てとれた。
 
 チームにとって久しぶりの公式戦。練習試合とは異なり、肉体と感情が激しくぶつかり合う空間で、反省すべき点や課題も見つけられたと思う。ここで得た経験を忘れることなく今後に活かし、開幕前に掲げた明確な目標へ向かって突き進んでほしい。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから