開幕から1カ月を終えて、6勝6敗。個々の選手たちの能力を考えれば、正直言って物足りない成績です。打線が機能していれば、あと3つは勝ち星を増やせたのではないでしょうか。投手陣の頑張りに攻撃陣が応えられていません。
 つながりの悪い要因は中軸の前後を打つ1、2番や6、7番の打者の不調です。特に攻撃の起点となるべき、1、2番は金城直仁(関西独立リーグ・神戸9クルーズ)、秋山繁(近畿医療福祉大)、増田康弘(福岡レッドワーブラーズ)らを日替わりで起用しているものの、まだどんぐりの背比べの状態が続いています。個人的には地元の大砲・高田泰輔が1番を打つくらいになってくれるとありがたいのですが、彼も開幕から14打数ノーヒットともがいています。

 そんな中でひとり気をはいているのが、クリーンアップを任せている武田陽介(神戸9クルーズ)です。ここまでの打率は.386。自分のかたちをしっかり持って打席に立てていることが好調の要因です。もともと彼は長打力がウリ。しかし、これまでは一発を狙うあまり打撃を崩していた面があったようです。今は追い込まれてもしぶとくライト前に運ぶバッティングができています。今の状態を継続していけば、自ずと長打も増えてくるはずです。

 NPBを目指すには外野よりも内野。そう考えて武田には現在、サードにチャレンジしてもらっています。実戦を経るごとに守りも合格点を与えられるレベルになってきました。「だいぶ守備がおもしろくなってきました」と本人も言っていますし、このまま大型内野手を目指してほしいものです。

 投手では3日の徳島戦で、篠原慎平が完封勝利をおさめました。この裏には捕手の鶴岡賢二郎(日本体育大)の働きが見逃せません。初回、先頭打者にヒットを許しながら、二盗を見事なスローイングで刺したのです。リードでも良いところを引き出し、中盤以降はまったく危なげのないピッチングを展開していました。篠原自身もMAX146キロといいボールが投げられていたと思います。この日もスカウトが視察にきていましたし、今後の本領発揮に期待したいところです。また左腕で2勝をあげている岸敬祐(JFBL大阪ゴールドビリケーンズ)には、あるヒントを与えてからおもしろい存在になりつつあります。力感のあふれる投手になれば、NPBへの道も拓けてくることでしょう。

 現状のチームはたとえていえば6つのボタンのうち4つほどしか止まっていない状況です。せめて、あと1つ投打がかみあえば、止められないチームになるとみています。それまでは少し我慢も必要でしょう。このゴールデンウィークの連戦がボタンがかかるきっかけになることを心待ちにしています。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。
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