千葉ロッテの勢いが止まらない。2年連続Bクラスに沈んでいたチームが夏場に入っても首位争いを演じている。
 データをみれば、昨季からの違いは一目瞭然だ。チーム打率は2割5分6厘(リーグ最下位)から2割8分7厘(12球団トップ)へ、チーム防御率は4.23(リーグ5位)から3.85(同4位)へと改善されている。

 ロッテが生まれ変わった要因のひとつとして、コーチ陣の手腕を挙げたい。今季から就任した西本聖投手兼バッテリーチーフコーチと、金森栄治打撃兼野手チーフコーチだ。
 投手陣は昨年までキャンプ中のブルペンでの投げ込みが制限されていた。前監督のボビー・バレンタインの指示だった。これは投手の肩やヒジを保護する観点からみれば正しいが、伸び盛りの若手にとっては練習不足となり、レベルアップをはかれない。
 そこで西本は投手陣に、「キャンプ中に2000球から2500球は放ってほしい」と要望を出した。決して選手たちには投げ込みを強制はしたわけではないが、練習量を増やしたことで1試合を投げ抜くスタミナがついた。

 ドラフト外入団では史上最多の165勝をあげた男だけに、その眼力も確かだ。たとえば今季からクローザ―に転向した小林宏之は昨季、先発で4勝13敗と苦しんだ。西本には気になる点があった。
「真っすぐがシュート回転したり、抜けることがあった。原因はフォームにあった。そのひとつが(投げる時の)立ち方。左足が右足より前に出て、クロスして投げていたんです」
 本人と相談してオープン気味に立つよう指導してから、欠点は改善された。ここまで2勝1敗11セーブ。安定した投球をみせている。

 一方、野手には金森が「腰で打て、体幹で打て!」と独自の打撃理論を注入した。ミートポイントを後ろに置き、反対方向へも強い打球を放つことを徹底させた。
「金森さんの教え方は理にかなっている」
 こう語ったのはリードオフマンの西岡剛だ。
「金森さんの指導で初心に戻ることができました。早く打とうとすると、どうしてもポイントが前になってしまう。体が早く前に移動すると、ボールはより速く見えるんです。金森さんは“もっとボールを呼びこんで打て”と。黙っていてもボールはこっちに向かってくるんですから」

 金森も現役時代は西武で広岡達朗に基礎を叩きこまれ、3年連続でセ・リーグの最多安打を記録した田尾安志に打撃を学んだ。身長170cmと小柄な体ながら、15年間、プロの世界で活躍した。
 そういえば指揮を執る西村徳文も、プロ入り後にスイッチヒッターに転向し、血のにじむような努力で首位打者と盗塁王のタイトルを獲得した。まさに“叩き上げの男たち”によるチーム再建は予想以上の速さで着々と進行している。
(記録はすべて6月14日現在)

<この原稿は2010年7月号『商工ジャーナル』に掲載されたものです>

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