二宮: 杉山さんはダブルスでは女子、ミックスとあわせて4大大会で4度も優勝し、2000年には世界ランキング1位(ダブルス)となりました。それこそ、プロ17年間で多くの選手とダブルスを組んだと思いますが、パートナー同士でお酒を一緒に飲んだりすることもあったんでしょうか?
杉山: ありましたよ。優勝はできませんでしたが、2007年の全仏、ウィンブルドンで準優勝した時のパートナー、カタリナ・スレボトニク(スロベニア)はすごくお酒が好きで、一緒に飲んだりしていましたね。他にも、ダブルスは組んでいませんが、アメリ・モレスモは大のワイン通で詳しかったですよ。


二宮: 杉山さんのお酒へのこだわりは?
杉山: 特にこれじゃなきゃダメ、というものはないんです。値段も関係ないですね。高級なお酒でも飲んでみて「あ、これは自分のテイストじゃないな」と思うこともありますし、逆に安価でも「うわ、美味しい」と思うこともあります。

二宮: でも、焼酎はなかなか海外では飲めませんよね。
杉山: そうなんです。和食のレストランに行っても、本格的に焼酎を置いているところはあまりないですね。

二宮: 最近では和食が好きな外国人もたくさんいますから、ぜひ焼酎も味わっていただきたい。
杉山: 本当ですね。この「那由多の刻」も飲んでほしいですね。これって、ブランデー好きな外国人には結構人気が出ると思います。

 遼くんの柔軟性に感服!

二宮: ところで、最近のテニスの傾向はどうなんでしょう?
杉山: より攻撃的になっていますね。ですから小手先の動きではなく、本当に効率のいい動きをしないと、対応することができずに、ショットのボールの質が下がってしまうんです。

二宮: 具体的にボールの質というのは?
杉山: つまりボールの重さですね。回転がかかればかかるほど重くなるのですが、そういうボールはバウンドした後もさらにグッと勢いよく跳ねて、なおかつ重い。代表的なのはラファエル・ナダル(スペイン)のボールです。彼はものすごくスピンをかけてくるので、相手は打つ前にその勢いを抑えるだけで大変なんです。そこから相手のコートにコントロールしながら打ち返さなければいけませんので、相当な力が必要です。バウンドしてからグッと球足が速くなるので、少しでもタイミングがずれると、もう抑えることさえもできない。ちょっと遅れると、パーンと弾かれてしまいます。

二宮: ボールの質といえば先日、スカパー! の番組でタイガー・ウッズと石川遼選手の対談の司会を務めたのですが、その時に遼くんがいい質問をしたんです。タイガーの打球って、地面にポトンと落ちる感じなんですね。ところが、遼選手の打球はコロコロと転がるんです。その違いについて遼選手がタイガーに訊いたところ、「キミは手だけで打っている。僕は体で打っているんだ」と言ったんです。なるほどなぁ、と思いましたね。どのスポーツにも言えることですが、体の重心を意識することは大切ですね。
杉山: 実は私、その対談の後に行なわれた「三井住友VISA太平洋マスターズ」の前日のプロアマ戦で、遼くんと一緒にまわらせてもらったんですよ。その時、体幹で打つということにトライしていましたよ。なるほど、タイガーからのアドバイスを受けてのものだったんですね。それにしても、将来を見据えてすぐにトライしようとする柔軟性が素晴らしいですよね。

二宮: 何かを変えるということは非常に勇気のいることでもありますよね。杉山さんは現役時代、人からのアドバイスは積極的に取り入れるほうでしたか?
杉山: そうですね。常に進化していたいと考えていましたから、変えたほうがいいかなと思う部分は試合中にでもトライしたりしていましたね。というのも、シーズンが終わってオフになってから修正しようと思っても、ゴルフ同様、テニスのオフは非常に短いので間に合わないんです。

二宮: 球技は最終的にはボールの質をどこまで高められるかが勝負になってくる。
杉山: 特にテニスは遠くに飛ばせばいいというわけではないし、スピンをかければいいというものでもありません。コントロールが重要になってくる。そういう意味では特にテニスとゴルフは似ているかなと思いますね。だから私は今、ゴルフにはまっているんです(笑)。

二宮: 杉山さんだったら、結構飛ばしそうですね(笑)。
杉山: 私自身、もっと飛ばせるはずだと思っているんですけど、なかなかうまくクラブに力を伝えられないんです。

二宮: そのうちプロになる可能性もあるのでは?
杉山: とんでもない! ゴルフって仕事にしたら、相当タフなスポーツですよね。でも、この間、男子のプロの方に「いや、意外に楽しめるかもよ」って言われたんです。

二宮: 危険な誘いですね(笑)。
杉山: いえいえ(笑)。今はすごく楽しんでいますね。一番はまっている趣味かな。

 無責任に褒め、責任をもって叱るべし

二宮: 話はかわりますが、杉山さんのような優秀なアスリートが育つ家族ってどんな感じなんでしょう?
杉山: うちの家族はよくお互いを褒め合いますね。「今日の服、ステキだね」とか「その髪型、似合っているね」とか。母がたまにメイクすると、妹と一緒に「かわいい!」って言ってあげたりするんです。私自身、プロになれたのは褒められて育ったからだと思います。

二宮: 褒め方のプロといえば、小出義雄さん。彼は本当に褒め上手ですよ。例えば、選手の手を見て褒めるんです「キミはきれいな手をしているなぁ。こんなきれいな手をしている選手は、きっとタイムも伸びるぞ」と。人間、褒められて嫌な人はいませんからね。そうやって選手のモチベーションを上げていく。ただ、どうしても褒めるところがない場合はどうしたらいいか。小出さんに訊くと「耳を褒めればいいんだ」と言うんです。なぜかというと、「女性の耳は一番見えにくいところだから、褒められたことはないはずだ。その耳を褒めるということは、“僕はそれだけキミのことを注意深く見守っているんだよ”というサインなんだ」と。
杉山: なるほど。確かに耳は褒められたことはないし、褒めたこともないですね。小出さんって、やっぱりすごいですねぇ。

二宮: 私がさらに「耳も褒めることができなかったら、どうするんですか?」と質問したんです。そしたら「そういう場合は、親を褒めればいい」と言うわけです。「キミはこんなにも真面目に練習をして、チームにも尽くしてくれている。きっと親が良かったんだな」と。親を褒められて嫌な顔をする人はいない、と言うんですね。さすが、オリンピックのメダリストを育てた指導者だけあるな、と感心しました。とはいえ、小出さんのように自然な感じで人を褒めることは難しい。そう言うと、小出さんはこうおっしゃる。「二宮さん、あなたはジャーナリストだから、常に正しいことを言おうとしているでしょ。でも褒めるときはね、無責任に褒めるんですよ。ただし、叱るときは責任をもたなければいけません」と。いや、もう本当に勉強させられましたね。
杉山: 「無責任に褒めて、責任をもって叱る」ですか。なるほど、それはいいですね。

 好みは“ブサかわいい系”

二宮: そうそう、引退してから犬を飼われたとか。
杉山: そうなんです! もともと犬が大好きで、ずっと飼いたいなとは思っていたんです。でも、現役時代は海外ツアーをまわって、ほとんど日本にはいないという状況でしたから、飼うことができませんでした。それで、引退したら飼おうかなと思って、海外ツアーの最後と決めていた昨年のUSオープンの時に探したりしていたんです。そしたら、両親がサプライズでフレンチブルドックの2カ月の赤ちゃん犬をプレゼントしてくれました。

二宮: フレンチブルドックのどこが好きなんですか?
杉山: どちらかというと、私はブサイクな犬が好きなんです。名前は「剛太(ごうた)」とつけたんですけど、これがまた、とってもブッサイクなんです(笑)。

二宮: ブサイクキャラに魅かれると(笑)。
杉山: はい(笑)。もともとブタが大好きなんですけど、フレンチブルドックのぺチャンってつぶれたような顔がもう、たまらなくかわいいと思ってしまうんです。

二宮: じゃあ、男性の好みもイケメンよりもブサイク好き(笑)?
杉山: いえいえ、イケメンも好きです(笑)。ただ、正統派ではないかもしれないですね。私だけが見出せる魅力をもっている人の方が味があるかなと。

二宮: なるほど、うまい言い方をしますね(笑)。犬もそういう観点から選ばれたと。
杉山: そうですね。フレンチブルドックを飼っている人同士では、“ブサかわいい系”のよさが理解し合えるんですよ。散歩していても、「かわいいですね」って言われると、「あ、この人、わかってくれている!」って思えて、フレンチブルドックを飼っている者同士、親近感がわいたりします。

二宮: 一方では無関心の人もいるんですか?
杉山: いますよ! 「何、このブサイクな犬」みたいなリアクションをする人もいるんです(笑)。

二宮: 散歩は一日何回、行くんですか?
杉山: 私は適当なんです(笑)。というのも、フレンチブルドックって、暑さにも寒さにも弱いんです。だから結構、室内で過ごすことの方が多いですね。

二宮: 繊細なんですね。見た目は図太い感じがしますが……(笑)。
杉山: 呼吸器系が強くないんでしょうね。いつも鼻がブヒブヒいっていて、息苦しそうなんですよ。皮膚も弱いし、短毛なので冬は風邪をひきやすいんです。

二宮: 寝不足になったりしませんか?
杉山: はい、なります。しかも、早起きなんです。私はオフの日の朝は、ゆっくりしたいと思うのですが、もう6時頃から吠え出すんです。「もう起きたから、出してよ!」って。だから「こっちは休みだよ!」って無視して寝ているんですけどね(笑)。そんな感じで、プライベートも充実しています。

(おわり)

<杉山愛(すぎやま・あい)プロフィール>
1975年7月5日、横浜市生まれ。4歳でテニスを始め、15歳で日本人初のジュニア世界ランク1位となる。92年、17歳でプロに転向。97年のジャパンオープンでツアー初優勝を果たした。99年の全米オープンでは混合ダブルスで優勝。さらに女子ダブルスでは2000年全米、03年全仏、ウィンブルドンを制した。00年にダブルスの世界ランク1位となり、03年にはシングルスで自己最高の8位に入る。ツアー通算成績はシングルス6勝、ダブルスは日本人最多の38勝。4大大会62連続出場はギネス認定の世界記録となっている。







★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

長期に渡り、樫樽の中で貯蔵熟成した長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」。豊かな香りとまろやかなコクの深い味わいが特徴。国際的な品評会「モンドセレクション」2010年最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
銀座 羅豚 はなれ
東京都中央区銀座8−10−8 銀座8丁目10番ビル1階
TEL:03-6808-1555
営業時間:
ランチ  11:30〜15:00(月〜日)
ディナー 17:00〜23:30(月〜金)、16:00〜22:00(土、日、祝日)

☆プレゼント☆
杉山愛さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」(720ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「杉山さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、杉山愛さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:斎藤寿子)
◎バックナンバーはこちらから