二宮: 田中さんは、将来的に水泳の現場でコーチをしたいという思いはありますか?
田中: 私が今目指しているのは、底辺の拡大と言うか、水泳ができない人にも泳ぎを楽しんでもらいたいということなんです。


二宮: それはどういった理由から考え始めたのですか?
田中: 水泳普及の仕事を多くやらしていただいていて、泳げない人を泳げるようにするということが、難しいけどすごく楽しいということに気付いたんです。たとえば平泳ぎが苦手な人の“あおり足”を直すとか。現役時代の難しさとは違う種類のものですが、それを克服するのが面白いですね。

二宮: 泳ぐことができても、どうすれば泳げるのか、どうすれば速くなるのかを伝えるのは、また難しいですよね。
田中: 平泳ぎで最も大切なのはタイミングなんです。みなさん呼吸の時に泳ぎが止まってしまうんですね。特に泳げない方は、呼吸を意識し過ぎてしまう。平泳ぎで最も進むのは伸びている時なんです。呼吸の時間をできるだけ短くしましょうということが大切です。

二宮: 上手な人は、スーッと棒のように伸びていきますよね。
田中: はい。だから私はいつも「北島(康介)選手を想像してみてくださいね」と言っているんです。そのイメージが大切なんですね。

 身近にいるからこそわかる“凄さ”

二宮: 田中さんは世界的に見れば身長が高い方ではないですよね。
田中: 私は165センチです。海外選手と比べれば小さいほうですね。同じ技術を持っているのなら、水泳の場合は背が高い方が絶対的に優位です。

二宮: そう考えると、先ほど名前の出た北島選手(178センチ)はすごいですね。海外の長身選手を相手にしているわけですから。彼は、次のオリンピックでも金メダルを獲れると思いますか?
田中: 金ですか……、私は北島選手が満足する結果であればいいと思っているんです。この質問はよく聞かれるのですが、「北島選手だったら(金メダルを)獲ってしまうかもしれない」という答えですね。

二宮: 水泳で3大会連続の金メダリストは思いつきません。
田中: いないと思います。今年の夏もパンパシフィック選手権を観に行ってきましたが、北島選手の集中力はすさまじいものがあります。

二宮: しっかりとオリンピックにピークをあわせてくることが何よりも素晴らしい。
田中: アスリートとして本当に素晴らしいですね。普段は、普通の男の子なんですけど(笑)。私にとって一番近くにいる世界に通用するトップアスリートということもあって、最も尊敬できるアスリートですね。イチロー選手や石川遼くんのように、客観的にみてすごいなと思う方ももちろんいるんですが、目の前に世界の頂点を極めた選手がいたわけですから、一緒の時代に泳げたことは本当に幸せだったと思います。一方で、私は最後までやりきったので後悔とかはないんですけど、それでも(メダルに)届かなかったという結果がある。それを考えると、北島選手は本当にすごいなと尊敬できますね。

二宮: 田中さんは3大会オリンピックに出場して、個人ではメダルに届かなかった。でもそこで、どうすれば勝てるのかと私たちに考えさせるきっかけをつくってくれたと思うんです。田中さんが活躍されていた時代があってこそ水泳関係者が色々なものを吸収し、検証して、日本の水泳が花開いたと思います。
田中: 意味があったのだとしたら、よかったと思います。あの時の私は「何もできなかった」という思いしかなくて、努力の無意味さをすごく感じたんです。でも、何年か経って、こういう言葉をかけていただいたり、全国各地でお会いする方に「あの時は応援していたよ」と言っていただけると「あぁ、がんばってきてよかったのかも」と思うんです。

二宮: 専門家が一生懸命考えても、どうしても謎が解けない部分があって、その後アテネからメダルを獲れるようになった。やはり、あの頃はもがく時期だったんだと思いますね。
田中: そうだとしたら、ありがたいです。

 女性アスリートは、純粋で真っすぐ

二宮: お酒も大分、進んできました。
田中: この「那由多(なゆた)の刻(とき)」って、めちゃくちゃおいしいです。飲みやすいから量を飲んでしまいますね。本当に、飲めば飲むほど香りが深い感じがします。これ今度、女子アスリートの皆さんと飲む時に、持って行きます。

二宮: 女性アスリートの方と一緒に飲むこともあるんですか?
田中: 今、私が色々な方に積極的にお誘いしているんです。仕事場とかで一緒になると、ナンパをするんです(笑)。女子アスリートのコミュニティーを大きくしようと思っていて、後輩の中村真衣ちゃんとかマラソンの千葉(真子)ちゃんを誘って、“女子アスリート会”を開催しているんですよ。

二宮: みんな、お酒は強いでしょ(笑)?
田中: それが、そうでもないんです。飲むのは私と(杉山)愛さん、谷川真理さんもお強いですね。それから、この間来てくれた澤(穂希)さんも結構強かったかな。二宮さんがメンバーを聞いたら、「絶対に来たいっ!!」って思いますよ(笑)。この間はバドミントンの潮田玲(子)ちゃんとか、ビーチバレーの浦田聖子ちゃんも来ましたね。あとはバスケットの原田裕花さん、スピードスケートの大菅小百合さんにバレーボールの吉原知子さん、ウェートリフティングの三宅宏美さん。卓球の四元(奈生美)さんとも飲みました。すごいメンバーでしょ。今、お誘いしているのは高橋尚子さんと高橋みゆきさん。お二人はタイミングがあわなくて来れなかったんです。この間は、荒川(静香)さんもナンパしてしまいました(笑)。

二宮: それはすごい女子会だ!
田中: 女子アスリート同士と飲んでいると何がいいって、すごく皆さん気持ちがいいんですよ。飲んでいても、どんな話でもスッキリしているというか。こっちの席ではスポーツの話をしていれば、あっちの席では恋愛の話をしているとか。最終的には一つの会にまとまって帰るみたいな感じの会です。

二宮: 理想的な飲み会ですね(笑)。
田中: みなさん、現役中ももちろんですが、引退してからも悩みがあったりするわけです。そんな中で、こういう会がもっと広がっていって、みんなが支えあっていければいいなと。これからもどんどん拡げていきたいと思っているんです。

二宮: 何か協力できることがあれば、遠慮なくおっしゃってください。
田中: あ、よろしくお願いします。頼りにしてます(笑)。

二宮: こっちは男子アスリートを連れていきますよ(笑)。あ、でも、男子がいないからこそ盛り上がるということもあるのかな。
田中: まぁー、そうですね。少数の男子で来たら、きっと大変ですよ。女子たちに責められますよ(笑)。

二宮: アハハ、アッシーに使われるかもしれない(笑)。
田中: それはいいですね(笑)。実は、他のスポーツとの交流というのは、私が現役の時はほとんどなかったんです。だけど、引退してから色々なスポーツの方と会うようになって「ゴハン食べようよ」とか「一緒に集まろうよ」ということになっていって、積極的に声をかけているんです。「こういう会をやっているので、興味あったら連絡先を教えてください」って(笑)。これからもこの女子会は続けていこうと思っています。

二宮: アスリートの恋愛事情というのは、どうなんですか? 体育会だと恋愛禁止というような雰囲気がありますけど……。
田中: えぇー、そんなことないですよ。もちろん、普通の子と同じように恋愛もしています。

二宮: 昔とは全然違ってきたんですね。
田中: もしかしたら昔はそうだったかもしれませんが、今の時代、恋愛は自由です。現役の頃から、みんな彼氏や彼女がいましたよ。高校生くらいになってからは、私も恋愛の悩みとかをコーチに相談したりしていました。

二宮: 田中さんは大学生の頃から取材させていただきましたが、そんな話は初めて聞きました。
田中: そうですかぁ。高校生の時から、休みの日に映画を観に行ったりとか、ゴハンを食べにいったりとかしていましたね。

二宮: ということは、選手仲間?
田中: そうですね。やはり生活スタイルが近いと理解してくれる部分も多いですし、お互いを支えあうこともできますから。アスリートの女性って、本当に裏がなくてストレートで純粋な人が多い。恋愛でも駆け引きとかなくて、真っすぐな場合が多いみたいですよ。

 水泳はケガせず、体を鍛えられる!!

二宮: 先ほど、ご主人と知り合ったきっかけはゴルフとうかがいました。もしお子さんができたらスポーツマンにさせますか。やはり水泳をやってもらいたい?
田中: うぅーん、野球をさせたい(笑)。もちろん泳げるようにはなってほしいんですけど。実は昔から原(辰徳)監督のファンなんです。

二宮: 広島の前田健太も、元々は水泳選手ですよ。
田中: 星野(仙一)監督も小学校の4年生まで水泳をやっていたそうですね。

二宮: ヘェーッ。マエケンは水泳をやって肩の稼動域が広くなったと言っていました。水泳を経て他のスポーツで成功する人は多いようです。やはり水泳は全身運動ですから、やっていて悪いことはありません。
田中: 心肺機能と柔軟性を鍛えられますし、ケガのないスポーツですからね。でも、今は甥っ子が少年野球をやっていて、めっちゃカワいいんですよ(笑)。ちっちゃなユニホームとグローブでがんばっていて、それを見て自分に子供ができたらさせたいなと思いました。北海道日本ハムに入れて、斎藤佑樹選手の後輩にさせたい(笑)。女の子なら、何がいいですかね……。

二宮: フィギュアスケートなんてどうですか?
田中: ウチは金銭的に無理だと思います。カッコイイし素敵ですけど。ただ、何でもいいのでスポーツはやってもらいたいですね。スポーツから学ぶことというのは本当に多くて、自分もそういう風に育ってきましたから。

二宮: 水泳では親子2代のオリンピック選手というのはいないんじゃないでしょうか?
田中: たしかに、お母さんが日本代表だったという選手はいましたが、オリンピックに出ているというのは聞いたことがないです。そこを目指すのもいいかもしれませんね。

(おわり)

>>前編はこちら

<田中雅美(たなか・まさみ)プロフィール>
1979年1月5日、北海道遠軽町生まれ。7歳で本格的に水泳を始め、94年日本選手権で100m、200m平泳ぎで2冠を達成。翌95年には100m平泳ぎで日本記録を更新する。96年アトランタ、00年シドニー、04年アテネとオリンピックに3大会連続出場し、アトランタ大会で200m平泳ぎ5位、シドニー大会で100m平泳ぎ6位、200m平泳ぎ7位入賞。さらにシドニー大会では400mメドレーリレーで3位となり、念願のメダルを獲得した。アテネ大会でも200m平泳ぎで4位となり3大会連続入賞を記録。05年に現役を引退し、現在はスポーツコメンテーターとして活躍する一方、水泳の普及活動にも尽力している。







★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

長期に渡り、樫樽の中で貯蔵熟成した長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」。豊かな香りとまろやかなコクの深い味わいが特徴。国際的な品評会「モンドセレクション」2010年最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
阿波踊り
東京都中央区銀座7−2−17 銀座不二家ビル2階
TEL:03−6218−0253
営業時間:
ランチ  11:30〜14:30(月〜金)
ディナー 17:00〜23:30

☆プレゼント☆
田中雅美さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」(720ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「田中さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、田中雅美さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:大山暁生)
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