第289回 川淵三郎、権藤博の長寿健康法
「四十、五十は洟垂(はなた)れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら百まで待てと追い返せ」
<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2025年1月31日号に掲載された原稿です>
これは日本資本主義の父・渋沢栄一の名言である。一万円札の“顔”でもある渋沢は1840(天保11)年3月16日に生を享け、1931(昭和6)年11月11日に没した。享年91。
長生きの秘訣は、82歳で始めた「坂本屈伸道」と呼ばれる独特の体操にあった。これは柔術家の坂本謹吾が考案した運動法で、正座の状態で両手をひざに置き、体を曲げたり伸ばしたりするものだ。
これにより内臓の血流がよくなり、胃や腸などの動きが活発化する。また横隔膜を収縮させることで、呼吸器の機能も高まる。それらの相乗効果により、代謝がよくなり、免疫力も増すと言われている。
老若男女、場所を取らずに誰でも行えるのがこの運動の特長で、“医者いらず”とも呼ばれているそうだ。
私が知る限りにおいて、90歳近くになっても、精力的な活動を続けているスポーツ界の大御所が二人いる。
ひとりは元オリンピアンでJリーグの初代チェアマン川淵三郎さん。昨年12月で米寿(88歳)を迎えた。しかし、いつお会いしても若々しく、クラブを振ればエイジシュートの常連。一度、健康法について訊ねると「朝起きたら、つま先立ちを30回やる」と語っていた。“第2の心臓”とも呼ばれるふくらはぎを鍛えているのだ。
もうひとりは、元ベイスターズ監督の権藤博さん。昨年12月で86歳になった。月に一度くらいお会いするが、よく飲み、よく話す。川淵さん同様、大のゴルフ好きで、年末年始は例年、米国でゴルフ三昧の日々を送っている。
権藤さんの1日は、朝の散歩から始まる。両手に1.4キロほどのダンベルを持ち、上下左右に上げ下げしながら3キロ程歩く。
継続は力なり。それが二人の共通点。歳を重ねれば、鍛えてナンボである。