第302回 世界を揺るがす米プロレス流政治

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「彼は根っからのMAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)だった。強く、タフで賢く、大きな心を持っていた」

 

 自らの支持者でもあったプロレスラーの「超人」ハルク・ホーガン氏の訃報を受け、ドナルド・トランプ米国大統領はSNSで、そう綴った。

 

 ホーガン氏がトランプ氏の大統領復帰に大きな役割を果たしたことは間違いない。

 

 昨年7月の、米大統領選挙に向けた共和党大会では、トランプ氏が銃撃されたことに触れ、「オレのヒーローに銃弾を浴びせやがった。もう我慢ならねえ!」と絶叫して、現役時代に比べるとやや細くはなったものの、それでも女性のウエストくらいはある太い腕で着ていたTシャツを引き裂いた。すると「トランプ2024」と書かれた赤いタンクトップが現れ、会場は異様な熱気に包まれた。

 

 

 政治とプロレスは親和性が高い。とりわけ強権的な手法を好むトランプ氏のような政治家は、マッチョなプロレスラーと相性がいい。それはトランプ氏がSNSにホーガン氏とアームレスリングに興じている写真をアップしたことに、よく表れている。

 

 時に相手を激しく罵倒するトランプ氏の演説も、プロレス仕込みだ。彼がリアリティ番組「アプレンティス」で決め台詞にしていた「オマエはクビだ!(You are Fired!)」は、元々はWWFのビンス・マクマホン会長が、気に入らないレスラーに対して使っていたものだ。

 

 ちなみに“トランプ2.0”の教育長官リンダ・マクマホン氏は、ビンス氏の妻でWWEの元CEO。今年4月のシンポジウムでは、人工知能を意味する「AI」を、何度も「A1(エーワン)」と言い間違えて失笑を買った。

 

 トランプ氏の自己陶酔的なアジテーションも、プロレスの世界では珍しくない。敵と味方を意図的に分断し、敵には降伏を、味方には、さらなる追従を迫る。

 

 友好国をも巻き込んだ、そんな政治がこの先も続くのかと思うと、暗澹たる気分になる。

 

<この原稿は『週刊大衆』2025年9月1日号に掲載された原稿です>

 

 

 

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