環太平洋大・石岡来望、ロス五輪への足掛かり「人生を左右する大会」 ~講道館杯全日本柔道体重別選手権大会~

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 毎年秋に行われる体重別日本一を決める「2025年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会」(講道館杯)が11月1、2日の2日間、千葉・ポートアリーナで開催される。講道館杯は2025年度後期の全日本強化選手、グランドスラム東京2025をはじめとする国際大会の日本代表選考会を兼ねている。今大会の注目は女子63kg級に出場する環太平洋大学4年・石岡来望。4月の無差別級で争う全日本女子選手権大会で3位に入ったホープが代表争いに名乗りを上げる。

周囲に支えられた1年

――講道館杯はコロナ禍の代替大会(全日本強化選手選考会)を含めると5度目の出場になります。

石岡来望: 2028年のロサンゼルスオリンピック出場を目指しているので、今年の講道館杯は、今後の人生を左右する大会だと思っています。

 

――それだけに例年以上に気合いが入っていると?

石岡: そうですね。また環太平洋大学の名が入った道着を着て、戦うのは今大会が最後になりますから。人生が懸かった大会という引き締まった気持ちもあれば、ワクワク感もある。これまでやってきたことを出し切れるよう頑張りたいです。

 

――大会での目標は?

石岡: もちろん優勝です。ただ内容よりも勝ちにこだわり過ぎると、考え方が狭まってしまう。それよりも自分のやるべきことを絞って戦いたい。

 

――今年は大学で主将を任され、全日本学生柔道優勝大会と全日本学生柔道体重別団体優勝大会の2冠達成に貢献しました。ここまでを振り返ると、どんな1年でしたか?

石岡: 苦しいことがたくさんあり、逃げたいと思うこともありました。でも何かを成し遂げた時、やり切れた時の達成感は代え難い経験でした。主将をやって良かったと、今は思っています。

 

――その苦しかったこと、とは?

石岡: 今年はケガがあって満足に稽古できない時期がありました。その時にどうチームを引っ張っていけばいいのだろうと悩みました。みんなとどうコミュニケーションを取るべきか、と。監督の矢野智彦先生からは「自分個人のこととチームのことを分けて考えてもいいんじゃないか」とアドバイスをいただきました。コーチの片桐夏海先生は環太平洋大学柔道部1期生の主将。片桐先生には当時の経験談を聞き、そこから自分なりの考えを構築していきました。同期のみんなを含め、周りに助けられた1年だった。今は感謝の気持ちでいっぱいです。

 

――今年4月には、無差別級大会の全日本選手権に出場しました。本来は女子63kg級を主戦場としていますが、3位入賞と健闘しました。

石岡: 全日本選手権は優勝を狙うという気持ちよりも、この大会をきっかけに自分を変えたいと思って出場した大会でした。

 

――そこで得られたものとは?

石岡: 勝負どころの見極めができれば、シニアでも十分通用する、ということ。冬の鍛錬期に技の精度を上げる稽古を積んできたおかげで、階級が上の相手とも戦える地力が付いたんだと思います。

 

「オリンピックで優勝」

――9月の全日本学生体重別選手権大会は、女子63kg級で準優勝でした。

石岡: この結果はめちゃくちゃ悔しかった。極端な話、優勝しか考えていませんでした。詰めが甘かったと反省しています。

 

――詰めが甘かったとは?

石岡: いろいろな場面を想定していたつもりでしたが、ポイントを取られた後に取り返すための準備が足りなかった。リスクを背負って攻めるところまで自分を持っていけなかった。最悪のケースも想定するという面で、準備不足だったと今は痛感しています。

 

――改めてご自身の武器は何でしょう?

石岡: 背負い投げを得意としていますが、寝技も自信を持っています。攻撃的なスタイルが持ち味で、かつしぶとく戦える点は私の強みだと考えています。

 

――片桐コーチは「何でもできる器用なタイプ」と評していました。

石岡: 他の人の技を見ていて、“これをやってみよう”とすぐに試します。自分でも使えそうな技があれば、結構活用することが多い。自分でも割と器用な方だと思います。

――大学に入って伸びた点は?

石岡: 一番はメンタルですね。1年生の時は負けるのを恐れて柔道をしていましたが、今は“自分の良さを出したい”と思えるようになった。いい部分も悪い部分も受け入れて戦えています。技術面では寝技がうまくなりました。それまでは担ぎ技に自信を持っていましたが、逆に言えばそれしかなかった。大学に入ってからは足技を強化することによって、担ぎ技も生きてくるようになりました。

 

――矢野監督と片桐コーチの技術指導も大きいですか?

石岡: そうですね。矢野先生は“ああしろ、こうしろ”と強制するタイプではなく、ポイントポイントで“こうしてみたらいいんじゃない?”とヒントをくれます。その先は自分で考えさせてくれる指導法なので、私にはそれが合っていると感じています。片桐先生は一緒に稽古するので、稽古中に自分から「こうした方がいいですか?」と相談させてもらっています。

 

――最後に今後に向けての目標を。

石岡: 一番はオリンピックで優勝することです。そこを目標にしていく中で、周りから応援される選手を目指していきたいと思っています。

 

石岡来望(いしおか・くるみ)プロフィール>

2003年11月21日、青森県生まれ。環太平洋大学4年。63kg級。3歳で柔道を始める。五所川原柔道少年団、五所川原第一中学、岡山・創志学園高校を経て、22年に環太平洋大学に進学した。創志学園高2年の時に全国高校選手権63kg級優勝。3年の時には全国高校総合体育大会(インターハイ)70kg級を制した。環太平洋大入学後は1年時に世界ジュニア選手権大会個人戦5位、団体戦で優勝。4年時に主将を務め、4月の全日本選手権大会で3位入賞。6月の全日本学生柔道優勝大会と10月の全日本学生体重別団体大会の2冠獲得に貢献した。身長165cm。得意技は背負い投げ。オフのリフレッシュ方法は友達と食事や遊びに出掛けること。

 

(取材・構成・競技写真2・3枚目/杉浦泰介、競技写真/大木雄貴、プロフィール写真/本人提供)

 

BS11では「2025年度 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会」の模様を12月2日(日)19時から放送します。男子の解説は2010年世界選手権男子100kg級金メダリストの穴井隆将さん、女子は2011年世界選手権女子57kg級金メダリストで東京女子体育大学柔道部の佐藤愛子監督が務めます。ぜひ中継をお楽しみに!

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