火の鳥が、佐藤駿を“高み”へと導いた ~フィギュアスケート団体戦~

facebook icon twitter icon

 ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート日本代表の佐藤駿(エームサービス/明治大学)は、団体戦の男子フリースケーティングで見事な演技を披露した。

 

 アイスダンスのリズムダンス、ペアと男女シングルのショートプログラム(SP)からなる予選を2位で通過した日本。フリーダンス、ペアと女子のフリースケーティング(フリー)終了時点、日本は順位点で米国と59で並んだ。

 

 日本の男子フリーは佐藤。米国はイリア・マリニンが出場した。団体戦、米国と金銀をわける戦い、世界王者とのアンカー対決。このシチュエーションの中、佐藤は堂々と「火の鳥」を演じた。

 

 マリニンはジャンプにミスが生じたものの構成なども関係し、高得点となる200.03点を叩き出した。

 

 佐藤も素晴らしいパフォーマンスを披露した。4回転ルッツ、トリプルアクセル(3回転半)+1オイラー+3回転サルコー、4回転+3回転のトーループ、4回転トーループ、トリプルアクセル+ダブルアクセルのシークエンスジャンプ、3回転ループ、3回転ルッツと全てのジャンプを決めた。観る者を魅了した佐藤は、フィニッシュポーズをほどくやいなや、右腕を大きく振ってガッツポーズをつくった。

 

 佐藤はキスアンドクライで「194.86点」という自己ベストを更新したスコアを目にして、泣いた。「うれしさ半分、悔しさ半分」と彼は涙の意味を語った。

 

 おそらく“ここまでできた自分”と“まだできる自分”を確認したのではないだろうか。「悔しさ」を埋める要素はある。その一部をあげるとすれば、基礎点が1.1倍になる演技後半に4回転を入れることや、レベル2と評価されたステップの改善などだろう。

 

 それはスタミナ不足に起因するのではないか。一朝一夕のうちに解決できる問題ではないが、個人戦ではどこまで後半の課題を改善できるかに注目したい。

 

 団体戦の収穫は2つあった。1つ目は、佐藤が世界選手権を2連覇している相手に勝つ気でフリーに臨み、土俵際までに追い込んだこと。最終的に回避したが、直前の6分間練習で予定にない4回転フリップを試したのはその証左であり、回避もまた勝ちにいくための選択だった。2つ目は、大健闘の末に更新した自己ベストスコアをもってして「悔しさ」を抱いたことだ。

 

 さまざまな状況が重なり、「火の鳥」が佐藤を一段、高みに導いたように映った。

 

 佐藤は目標とするスケーターに五輪男子シングルを連覇(2014年ソチ大会、2018年平昌大会)した羽生結弦の名前を挙げる。

 

 かつて羽生は、2019年の世界選手権を前にして「己に勝った上で勝ちたい」と口にした。

 

 ジュニア時代に「火の鳥」を演じ、のちに逞しく羽ばたいた羽生の姿に、いまの佐藤が重なる。

 

(文/大木雄貴)

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP