うれしいニュースが入ってきた。
 今年も大晦日に総合格闘技のイベントが継続開催されることになったのだ。
 12月31日、さいたまスーパーアリーナにて『DREAM18 大晦日スペシャル2012』が開かれると10月25日に発表された。
 前回のコラムで私は、<さいたまスーパーアリーナを舞台として続けられてきた大晦日の総合格闘技イベントの継続は難しいかもしれない>と書いた。
 でも、その予測は喜ばしい形で外れた。これで今年も除夜の鐘を、さいたまスーパーアリーナで聴くことできる。

 運営母体のFEGが倒産したことでDREAMも終焉を迎えたかに思われた。
 青木真也vs.ロブ・マックローをメインカードに『DREAM17』が開催されたのは昨年の9月24日(さいたまスーパーアリーナ)のこと。以降1年以上、次回大会の開催が発表されていなかった。PRIDEから継続して見続けたファンも、「ここまでか……」と諦めていたはずだ。

 だが、どっこいDREAMは生きていた。今大会から主催・運営会社を担当するのは、欧州で立ち技系格闘技イベント『グローリー』を開催しているGSI(グローリー・スポーツ・インターナショナル/ピエール・アンデュランド代表)。『DREAM18』は大晦日の単独イベントではなく、新体制での来年以降を見据えた再スタートの大会となる。

「DREAMは、まだ終わっていない。そのことをファンに伝えたかった。だから大会名もDREAMにこだわりました」
『PRIDE1』からのイベントスタッフで、元DREAMのイベントプロデューサー、今大会では広報としての役割を果たす笹原圭一氏は大会開催発表記者会見で、そう話した。実際、来年はDREAMを10大会開く計画が立てられているようだ。すべてが総合格闘技のイベントではなく、「総合格闘技5大会、キックボクシングが5大会」の内訳のようだが、これが実現すれば、総合格闘技再興への道が開かれることになる。

 さて大晦日の『DREAM18』だが、現時点(10月31日)で参戦が決定しているのは、大晦日大会7年連続参戦となるクラッシャー川尻達也(T-BLOOD)、第2代DREAMフェザー級王者の高谷裕之(高谷軍団)、元パンクラスの北岡悟(ロータス)の3選手。試合は13試合(総合格闘技10試合、キックボクシング3試合)を予定しているというから今後、続々と出場選手、カードが発表されていくことになるだろう。

 気になるのは石井慧(ブラックハウス)だ。北京五輪・柔道100キロ超級で金メダルを獲得し、その後に総合格闘家へ転身したが、あれから4年、彼は周囲を唸らせる闘いを、まだ一度もしていない。昨年の大晦日には『元気ですか!! 2011』のメインエベントで憧れのエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)と闘うチャンスを得たが、154秒でアッサリとKOされてしまった。

 以降、リングに一度も上がっていない石井が『DREAM18』に参戦する可能性は高いように思う。少なくとも彼にオファーは届くはずだ。
 石井が総合格闘技に転向すると発表した時、彼は「救世主だ!」と呼ばれた。しかし、そうはならなかった。総合格闘技の衰退とともに彼も忘れ去られた存在となっている。今年の大晦日は、参戦なれば石井にとってラストチャンスである。勝てる確率は低いとはいえ、イチかバチかの大勝負……アリスター・オーフレイム(オランダ)との一騎打ちが見たい。

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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』(汐文社)ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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