北中米W杯で勝つために――。大迫敬介の準備力

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 日本代表のワールドカップ史を振り返っても、GKというポジションは大会を通じて固定されるのが常だ。

 

 前回のカタールワールドカップは権田修一が正GKとなったが、今回の北中米ワールドカップはケガから復帰して先の英国遠征でも好パフォーマンスを見せた鈴木彩艶がその役割を担うことはまず間違いない。26人の登録メンバーのうち、GK枠はおそらく「3」。残り2枠は英国遠征に帯同した大迫敬介と早川友基の選出が有力だろう。

 

 サンフレッチェ広島の守護神である大迫は「準備の人」だと言える。

 

 4月11日、4連敗で臨んだホームでの清水エスパルス戦は1-1で90分を終え、PK戦に持ち込まれた。大迫は4人目、小塚和季のキックを見事に読み切って食い止めている。「PK戦勝利」の勝ち点2を積み上げ、連敗ストップに大きく貢献した。

 

 PK戦は今季2度目。2月14日、ファジアーノ岡山との中国ダービーにおいても4人目を止めて勝利に導いた。「PKに強い大迫」を印象づけている。

 

 実は百年構想リーグでの導入が決まるずっと前から彼はPKストップへの意識を高めてきた。今年3月に広島でインタビューした際、彼はこう語っていた。

 

「カタールワールドカップでPK戦に負けたことが、今まで以上に力を入れていこうと思ったきっかけにはなりました。本大会で優勝するチームはPKも含めて勝ち上がっていて、GKが勝利の立役者になっているので。この百年構想リーグでもPK戦があるというところで練習量を今までよりも増やしています」

 

 日本はワールドカップにおいて過去2度、ラウンド16でPK戦に敗れている。南アフリカではパラグアイ代表に3-5で、そしてカタールではクロアチア代表に1-3で涙をのんだ。大迫は小学生のころ、パラグアイとの試合をリアルタイムで「緊張しながら観ていました」という。

 

「最高の景色」を目標に掲げる日本代表が優勝するには、PK戦に強くなっていく必要がある。カタールで優勝を遂げたアルゼンチン代表もノックアウトステージに入ってから準々決勝のオランダ戦、そして決勝のフランス代表戦と2度のPK戦を制して頂点にたどり着いている。

 

 ワールドカップで勝つための、活躍するための準備――。

 

 大迫は日ごろの練習からPKを取り入れ、相手の目線やボールへの入り方、角度など見るポイントを自分なりにつくってきた。世界のGKのプレー動画もチェックして参考にしつつ、トレーニングのなかで微修正を繰り返して磨き上げている。

 

「GKをずっと見てくる選手(キッカー)もいれば、まったく見てこない選手もいます。ただいずれにせよボールに当たる瞬間は一つ。そこをうまく見極めたいとは思っています。メンタル的にはGKのほうが有利。間違いなくプレッシャーは相手のほうにありますから」

 

 元々、PKが得意だという印象はなかった。カタールワールドカップ前の2022年10月、ヴァンフォーレ甲府との天皇杯決勝では1-1でPK戦に突入。ヴァンフォーレのキッカー5人にすべて決められ、悔しそうにしていた表情を思い出す。前年9月の天皇杯4回戦、大分トリニータとのPK戦では10人連続で決められて、9-10で敗れた苦い記憶もある。

 

 大迫とPKにおいて忘れられないのが、2023年10月、カナダ代表との親善試合である。自らPKを与えてしまったものの、動揺の色すら見せずに真ん中を狙ってきたジョナサン・デイビッドのキックを残した右足に当てて防いでいる。

 

「早く動きすぎると相手に分かってしまうし、逆に我慢しすぎるとコースに届かなくなってしまう。動くタイミングを大切にしながらも、真ん中を残しながら左右に振られたボールを止められるかっていうところも意識しています」

 

“メンタル的に優位”を意識しつつ、落ち着き払っていた。地道に努力と研究を重ね、PKに弱いイメージを払しょくしたシーンでもあった。

 

 総力戦で挑む北中米ワールドカップになることは言うまでもない。「PKに強い」大迫敬介の出番が訪れるかもしれない。

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