球団創設9年目。東北楽天の初優勝が見えてきた。
 マジックナンバーは点いたり消えたりの状態だが、9月9日現在、2位・千葉ロッテに6ゲーム差の首位。8月22日には三木谷浩史オーナーが星野仙一監督に続投を要請した。

 星野が即答を避けたのは、口にこそ出さないが「今はグラウンドに集中したい」との思いがあるからだろう。逆に言えば、それだけ、このシーズンに懸けているということだ。
 星野は昨季まで15年間の監督生活で3度リーグ優勝を果たしている。優勝確率は2割。そう高いわけではない。

 星野が率いるチームが優勝する時は、ある傾向がある。2位以下のチームを大きくぶっちぎるのだ。

 1988年、中日監督に就任して2年目で星野はリーグ優勝を果たした。2位・巨人に12ゲーム差をつける圧勝だった。前年に落合博満をトレードで獲得するなど、積極的な補強策が実を結んだ。

 2度目の優勝は99年。開幕11連勝のプロ野球タイ記録で勢いに乗り、2位・巨人に6ゲーム差をつけてのゴールインだった。
 この年は抑えの宣銅烈やセットアッパーのサムソン・リーなど韓国勢が活躍した。

 そして3度目は03年。阪神の監督に就任して2年目でチームを18年ぶりのリーグ優勝に導いた。自らが口説き落とした金本知憲と伊良部秀輝(故人)が大活躍した。

 この年に記録した87勝は球団新記録。2位は中日で、その差は14・5ゲーム。古巣に“虎の尻尾”すら踏ませなかった。

 こうした傾向を踏まえて言えば、楽天が優勝する場合、2位以下とはもっとゲーム差が開く可能性が高い。反面、2位以下のチームが終盤になって追い上げ、混戦になれば、楽天にとってはピンチである。

 これまでのデータを見る限り、なぜか星野は短期決戦に弱い。日本シリーズは3度戦って、全敗。88年が1勝4敗、99年が1勝4敗、03年が3勝4敗だった。
 日本代表の指揮を執った08年の北京五輪も、決勝トーナメントでは韓国、米国に続けて敗れ、メダルを逃している。

 このように短期決戦に弱いのは、単なる偶然なのか、それとも何か理由があるのか。

 しかし、再建人としての星野の手腕は確かである。18年間、優勝から遠ざかっていた阪神に続いて、新興球団の楽天もリーグ優勝に導けば、名将としての評価は揺るぎないものになるだろう。

 80年近い歴史を誇るプロ野球において、3球団にまたがって優勝を果たした監督は三原脩(巨人−西鉄−大洋)、西本幸雄(大毎−阪急−近鉄)の2人しかいない。3人目となれば、レジェンドの仲間入りだ。

 だが星野は「まだ山もあれば谷もあるよ」と、どこまでも冷静だ。

 この秋、指揮官は66歳にして、人生最大の勝負を迎える。

<この原稿は2013年9月22日号『サンデー毎日』に掲載され原稿を一部修正したものです>

◎バックナンバーはこちらから