東京ヤクルトの西浦直亨が横浜DeNAとの開幕戦でプロ初打席初ホームランを記録した。これは史上55人目の快挙だ。
 ルーキーでの開幕戦初打席アーチとなると1950年の戸倉勝城(毎日)に次いで史上2人目。しかも初球を打ったのは史上初だった。


 今から29年前、プロ初打席でホームランを放ち脚光を浴びた選手がいる。現在はキャスターとして活躍している元ヤクルトの青島健太だ。

 代打として登場した青島は阪神・工藤一彦のフォークボールを神宮球場のバックスクリーン方向に叩き込んだ。

 ドラフト外入団ではあったが、慶大―東芝で活躍した青島はアマ球界のスターであり、「やはり強運の持ち主だ」などと持ち上げられたものだ。

 しかし、青島はプロ5年で2本しかホームランを放つことができなかった。つまり、この後、追加したホームランは、わずかに1本。

「初打席でいきなりホームランを打ったことで、ちょっとプロをなめた面はあったかもしれないね」
 過日、会った際、青島はこう語っていた。

 後日談がある。
 2年目、南海とのオープン戦だ。青島はマスク越しに“ドカベン”ことキャッチャーの香川伸行から、こう声をかけられた。

「青島さん、初打席初ホームラン、すごかったですねぇ」
「ドカ、ありがとう」
「実は僕も初打席でホームランを打ってるんですよ」
「そうだったのか?」
「この記録を持っている選手で大成した選手は、ほとんどいないそうですよ」
「……」

 そこで調べてみた。日本人に限っていえば、この記録を持っている選手は33人いる。その中で、2000本安打を達成した選手は高木守道(中日)と駒田徳広(巨人―横浜)、稲葉篤紀(ヤクルト―日本ハム)の3人だけだ。香川が指摘するように、大成した選手が多いとは言えない。

 一方で、このホームランのみの「通算本塁打1」で終わった選手も投手を除いて5人いる。

 西浦は守備面で非常に高い評価を受けているルーキーである。ヤクルトOBの宮本慎也は、こう褒めていた。

「やっとボールをちゃんと投げられる、まともな内野手がヤクルトに入ってきた」

 西浦のプロ野球人生はスタートしたばかり。ぜひ、史上初の記録の持ち主として、プロで大成してもらいたいものだ。

(この原稿は『週刊漫画ゴラク』2014年4月25日号に掲載されたものです)


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