4年前にはトップリーグ入替戦に出場したチームが、日本一に上りつめたのだから、これは快挙である。
去る2月28日、ラグビー日本選手権決勝でヤマハ発動機がサントリーを下し、創部31年目で初優勝を飾った。


監督の清宮克幸にとって、サントリーは5年前まで指揮を執った古巣。07年度にはトップリーグ優勝を果たしている。
それだけに古巣を倒しての日本一の味は格別だったはずだ。「サントリーに育てられた恩にしっかり応えることができた」と目を赤く染めながら語った。

優勝の原動力は粘り強い守備だった。タフで屈強なスクラム、タックルこそは“清宮ラグビー”の真骨頂である。

前半13分に約40メートル超のPGを決め、3点を追加したFB五郎丸歩は早大時代、2年間に渡って指導を受けた清宮の申し子である。
後半10分には反則でシンビン(一時的退出)となり、数的不利を余儀なくされた。サントリーにとっては最大のチャンスだったが、攻めきれない。低くて重いヤマハ発動機のタックルがサントリーの行く手を阻んだ。

ヤマハ発動機は五郎丸不在の10分間を乗り切ると、最後までブレイクダウンの攻防で相手を圧倒し続けた。
15−3。歓喜のノーサイドは五郎丸がタッチラインの外にボールを蹴り出した瞬間に訪れた。

試合後、五郎丸は顔面を紅潮させて「やっとここまで上りつめた。大学で3回(大学)日本一になったけど、それとは比べものにならないくらいうれしい」と語った。

五郎丸はジャパンでも不動のFBとして活躍する。キャップ数は43。
2012年にエディー・ジョーンズが日本代表ヘッドコーチに就任し、コンスタントに代表に選ばれるようになった。当時、体重は95キロだった。それが今では100キロ近くある。増量したのは指揮官の要望によるものだった。

「僕は(FBとしては)そんなに足が速い方ではない。海外の選手とコンタクトプレーで互角に渡り合うには、それくらいの体重が必要だと言われたんです」

五郎丸は、ラガーマンが最大の目標とするW杯に、まだ出場したことがない。29歳で迎える今秋のイングランド大会は、ラグビー人生のハイライトと言っていいだろう。
「本番前に、もう少し後ろの筋肉、広背筋などをつけたい。この部位の筋肉がつくと確実にコンタクト力が上がると思っています」

朝6時頃には起床し、夜10時過ぎには床につく。アスリートとしては模範的な生活だ。
「向こう(イングランド)は雨が多いので、グラウンドが日本のように硬くない。ステップを踏むとズレる時がある。これからは、そういう対策も行うことになるでしょう」

日本一を達成した今、次の目標はW杯での予選プール突破、すなわちベスト8進出である。

<この原稿は『サンデー毎日』2015年3月22日号に掲載されたものです>


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