見ていて、そのフルスイングには、ほれぼれする。昔風の言い方をすれば「ゼニのとれる選手」である。


 埼玉西武の19歳・森友哉が「マツダ オールスターゲーム2015」のファン投票で、両リーグトップの53万6267票を集めた。
 今季の成績は7月13日現在、打率2割8分9厘、13本塁打、42打点。公称・身長170センチの小さな体のどこにパワーが詰まっているのか。

 昨季まで千葉ロッテのマスクを被っていた里崎智也が語っていた。
「あそこまでフルスイングできるバッターは、そうはいない。バッテリーにとって一番怖いのはフルスイングする選手。振らない選手は楽。どんなボールでもカウントがとれますから」

 元西武打撃コーチの土井正博もベタ褒めだ。
「森は構えた時に力が入らない。インパクトの瞬間だけ力を入れるコツを知っている。あんな19歳を見たのは清原和博以来や。柔道にたとえていえば、入団した時から黒帯を締めていたようなもんですよ」

 1年目の昨季、8月14日から16日にかけて、3試合連続ホームランを放った。これは高卒新人では68年の江島巧(元中日)以来、46年ぶり。プロ野球史上3人目の快挙だった。

 DHに座った今季は、さらにパワーアップしているような印象を受ける。森のフルスイング効果は先輩をも覚醒させた。

 目下、打率3割8分7厘で柳田悠岐(福岡ソフトバンク)と首位打者争いを展開している秋山翔吾がキャンプ中、森のフォームを見て、バットを寝かせた構えにしたのは有名な話だ。
「いい教材に出会えたと感謝しています」と秋山。タイトルをとれば、後輩にお歳暮を贈らなければなるまい。

 身長170センチの長距離砲といえば、通算567本塁打の門田博光が思い浮かぶ。豆タンクのような体から弾き出される打球は、高く、鋭かった。

 野球は体でやるものではない。大事なのは志だろう。

<この原稿は2015年7月20日号『週刊漫画ゴラク』に掲載された原稿を一部再構成したものです>


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