バリバリのメジャーリーガー黒田博樹の8年ぶりの復帰もあり、開幕前には優勝候補と目された広島カープが低空飛行を余儀なくされている。
 6月22日現在、30勝35敗でリーグ5位。35敗のうち逆転負けが19もある。リリーフ陣が安定していない証拠だ。


 近代野球の勝利の法則は“逆算式”だといわれる。最後を締めくくるクローザーと“中抑え”のセットアッパーが安定しないことには、長丁場のペナントレースを乗り切ることはできない。

 そこで広島の緒方孝市監督は交流戦の途中から先発で、ここまで1勝6敗と不振に喘いでいた大瀬良大地をリリーフに回した。第一の狙いはもちろんブルペンのテコ入れだが、大瀬良に気分転換をさせたいとの意図も含まれているのではないか。

 実際、先発ピッチャーの中にはリリーバーへのコンバートが吉と出た者もいる。先発の場合、負けると、次の登板まで5日も6日も悶々とした日々を送らなければならない。
 ところが連日のようにマウンドに上がるリリーバーには、打たれても悩んでいる時間がない。逆にそれがよかった、という話を聞いたことがある。大瀬良も、そうであればいいが……。

 3球団が競合する中、ドラフト1位で広島に入団した大瀬良にローテーションの屋台骨としての期待がかかるのは当然だ。
 エースの前田健太はMLB移籍を希望しており、海を渡った場合、代わりが務まるのは彼しかいない。

 昨季は10勝8敗、防御4.05という好成績で新人王に輝いている。リリーフ転向は、あくまでも一時的な措置だろう。
 ただ、どうせリリーフを任せるのなら、ピッチャーの格からしてセットアッパーよりもクローザーの方がいいのではないか。

 カープOBの池谷公二郎が、こんなコラムを書いている。
<過去カープの投手陣の例を見ても、大野豊、津田恒美、佐々岡真司と、彼らは先発から中継ぎではなく、ストッパーへ配置転換したことでチームに貢献し、自らをレベルアップさせてきました。これらの例のように、責任あるポジションを任せることが、大瀬良の成長へと繋がるのではないでしょうか>(『広島アスリートマガジン』携帯サイト2015年6月12日付)

 全く同感である。セットアップも重要な役割には違いないが、クローザーとなると、その責任はいや増す。1球に対する重みを知ることは、将来、先発に戻ってからもプラスに働くはずだ。
 開幕前、指揮官はデュアンテ・ヒースに締めくくり役を任せた。ところが結果が出ずに2軍降格。セットアッパーの中崎翔太が“繰り上げ当選”のようなかたちでクローザーに昇格したが、0勝4敗7セーブ、防御率4.25という成績が示すように著しく安定感を欠く。

 勝てるゲームをきっちり勝ち切らないことには浮上のきっかけは掴めない。そのために大瀬良という“大駒”を、どう使うか。指揮官の起用法も問われている。

<この原稿は『サンデー毎日』2015年7月5日号の原稿を一部再構成したものです>


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