香港は3月に入り、暖かいを通り越して暑くなってきました。気温は25度前後に上昇し、半袖でも十分過ごせます。アイスを食べたり、水遊びをしたり、まさに初夏の雰囲気です。

 ただ、4月になると雨季にさしかかり、一気に蒸し暑くなってきます。湿度もかなり上昇するため、昨年はクローゼットにしまっておいたお気に入りの服にカビが繁殖してしまいました……。体力も奪われるため、いつも以上に食事や水分補給に気をつかう季節です。

 前回、コラムをお届けした次の試合(2月23日)はレンジャーズに4-1の快勝。僕も2ゴールにPKをひとつ奪い、3得点に絡むことができました。

 これで勢いが出るかと思いきや、なかなか波に乗れないのが今季の現状です。2月26日の太陽ペガサス戦は1-3、3月16日のイースタン戦は0-2……。その間に行われたカップ戦にも1-3で敗れ、1回戦敗退となってしまいました。

 敗戦から課題をみつけると、やはり立ち上がりや、終了間際といった最も集中しなくてはならない時間帯での失点が目立ちます。開幕から何度もチーム全体で気をつけているにもかかわらず、一瞬のスキを突かれ、同じパターンでやられている。これはプロとして恥ずかしいことです。

 現在、チームはリーグ戦では勝ち点9の実質最下位。以前、紹介したように、今季は八百長問題で参戦停止が決定したクラブがあるため降格はありません。しかし、全員がもっと危機感を持って、残り試合に臨まなければ、来季以降も同じ失敗を繰り返してしまうでしょう。

 練習はもちろん、普段から、いかにサッカーのことを中心に生活ができるか。現状を打破するには、もっと自分の置かれている立場や役割について突き詰めて考えなくてはなりません。

 僕は長くプロとしてプレーしてきて、すべての行動は試合につながっていると感じています。それは練習のみならず、食事や睡眠、オフの過ごし方も含んだものです。休日に買い物に行っても、子どもたちと遊んでいても、それは翌日からサッカーに100%集中するためのリフレッシュ。家族には迷惑をかけているのは申し訳ありませんが、あくまでも僕にとってはサッカーがメインなのです。

 とりわけ海外にはピッチを離れると、サッカーのことは関係ないという考え方の選手もいます。確かにオンとオフの切り替えは大事です。だからと言って、一流の選手がサッカーのことを完全に忘れているかといえば、そうではない気がします。トップクラスになればなるほど、自らが成長するには何をすべきか常に頭をめぐらせ、日頃から、さまざまなことを参考にして学んでいるはずです。

 特に負けが込むと、「切り替え」という言葉は「現実逃避」につながることがあります。「負けたんだから仕方がない。次に切り替えて頑張ろう」という発想は前向きなようにみえて、実際には何の問題解決にもなっていません。結果が出ない時ほど現実から逃げず、何が足りないのかを見つめる必要があるでしょう。

 当然、僕もチームの一員として、この低迷には責任を感じています。FWとして、もっとチャンスで決めていれば、勝ったり、引き分けに持ちこめていた試合があるはずです。1点で満足せず、2点、3点とゴールを重ねて、勝利に貢献したいです。

 カップ戦でもヘディングシュートを決め、今季の得点はリーグ戦を合わせて11ゴールとなりました。香港リーグではすべての公式戦の合算で得点王を決めるため、現時点で僕は3位につけています。1位で並んでいる2選手とは、わずか1ゴール差です。

 カップ戦で敗退したため、残りはリーグ戦のみで5試合。カップ戦で勝ち進んでいるトップ2選手と比べれば不利な状況ですが、ゴールを量産することがチームの浮上にもつながると信じ、得点王を狙っていきたいと思っています。

 カップ戦のゴールに代表されるように、今季はヘディングシュートが僕のストロングポイントになりました。ただ、今後、得点を増やすには他のパターンでもゴールできるに越したことはありません。練習から一層、得点への意識を高め、周囲との連携を高めていくつもりです。 

 得点王を獲得すれば、現地のファン、日本で応援していただいている方への、ひとつの恩返しになるでしょう。36歳のベテランでも活躍できるところを示すことで、同年代の皆さんに「オレもやれる」という力を与えられるかもしれません。僕自身にとっても決して残り長くはない現役生活で、大きなステップとなるはずです。

 思い返せば1年前の今頃は、途中加入でゴールがなかなか生まれず、チームも残留争いの真っただ中でした。家族とともに香港に渡ったのに、結果が出ない日々は正直言って本当に苦しかったです。

 でも、このコーナーで「いい報告ができるように頑張ります」と書き続けてきたことが励みになりました。決意表明したからにはやらなきゃいけない――その一心で1日1日を積み重ねてきたからこそ、今があると考えています。

 だから残り5試合、チームとしても個人としてもいいかたちでシーズンを終える! このことを皆さんにお約束します。ぜひ次回、いい報告ができるように頑張ります。

(このコーナーは第3木曜更新です)
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