ライバルの韓国を下し、東アジアカップを制したザックジャパン。今回は欧州組、そして国内組の主力を除く「Jリーグ選抜」のような形で大会に臨んだが、柿谷曜一朗(セレッソ大阪)らを筆頭に勢いのある国内組の若いメンバーの奮闘によって、タイトルを勝ち取ることができた。

 この“東アジア組”23人のメンバー構成を見ると、ひとつ面白いことに気づいた。J2経験者が実に多いのだ。その数、15人。柿谷や豊田陽平(サガン鳥栖)らJ2で揉まれてきた選手たちが、成長して代表の座を射止めたということになる。

 なかでも愛媛FC出身者は、何と3人もいた。トップ下で2試合に先発し、柿谷と好連係を見せた高萩洋次郎(サンフレッチェ広島)、右サイドバックで起用され、オーストラリア戦の勝利に貢献した森脇良太(浦和レッズ)、そしてオーストラリア戦で代表初ゴールを挙げた“エヒメッシ”こと齋藤学(横浜F・マリノス)だ。マリノス復帰後は“ハマのメッシ”や“カモメッシ”と呼ばれているとか。

“愛媛組”のなかで特にインパクトを残したのが齋藤だったように思う。
 初戦の中国戦こそ低い位置でボールを受け取ることが多く、持ち味を発揮できなかった感はあるものの、先発したオーストラリア戦では積極的に仕掛けていった。

 サイドに張る約束事もあって、マリノスとは逆の右サイドで起用された。それでも臨機応変に左右のポジションを入れ替わってプレーしていた。前半25分にペナルティーエリアの中央左でボールを受けると、そのまま横にドリブルしながら相手をかわし、GKのタイミングを外してのシュートをゴール左隅に決めた。まさにリオネル・メッシ(バルセロナ)ばりのゴールシーンであった。

「(得点の場面は)間を突いていこうと思っていたのですが、相手が全然ついてこなかった。バイタルエリアで前を向けたので、まあ良かったとは思います」

 試合後の齋藤はそう言って、淡々と代表初ゴールを振り返った。

 オーストラリアの守備は前に強いものの、横の動きには弱い。その弱点を突くように、齋藤の仕掛けが効いた。2点目もクサビを受けた豊田のパスをスルーして、大迫勇也のゴールを演出している。

 ただシュートはゴールを挙げた1本のみで終わったため、試合後の満足度は今ひとつ。
「ゴールをしたシーン以外にあんまりいいシーンがなかった。それを反省として次にやれればいいかなと思います。もっと高い位置でボールを受けてから仕掛けることができれば良かった」

 反省材料のほうを気にしている様子だったが、アルベルト・ザッケローニ監督にはいいアピールになったのではあるまいか。

 それにしても齋藤の今季の成長ぶりは著しい。

 好調を続けるマリノスの中心選手の一人であり、齋藤の迫力ある仕掛けから流れが変わった試合もあった。サッカー解説者の三浦淳寛氏が「ペナルティーボックス内で仕事できる希少なタイプ。アタッキングサードのワイドなポジションでボール持ったら相手も怖い」と高く評価すれば、福西崇史氏も「周りを使えるようになって、プレーの幅が広がった感じがある。ブロックを崩す“壊し屋”としても魅力だ」と今季の注目選手として名前を挙げていた。

 ドリブル、シュートなども迫力を増した感はあるが、味方の動きを察知しながらプレーできるようになったところが大きいと見る。たとえばパスに合わせてスペースに出ていくタイミングであったり、ボールを呼び込む動きがグンと良くなった。そして中村俊輔も評価していたが、守備力が向上して実に粘り強くなっている。ロンドン五輪を経験して、順調にレベルアップを図っている若手の一人だと言える。

 1つのプレーで、流れを変えられる貴重な存在。今のザックジャパンにはそういう切り札的な存在がいない。さらなる成長を遂げることができれば、齋藤に白羽の矢が立つ可能性は十二分にある。

(このコーナーは第1、第3木曜に更新します)
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