後期シーズンは山場を迎えています。ここまでは12勝9敗2分の2位。首位の愛媛、香川と優勝を争っています。打撃陣が不調の中、投手陣が頑張り、何とか勝ち星を重ねている状況です。
 先発陣では高卒ルーキー吉田嵩が後期に入り、3試合連続完投勝ち(うち完封1)と活躍をみせています。ボール自体は前期と変わりはないものの、丁寧に低めへ投げていることが好成績の要因でしょう。まだ19歳で、これからのピッチャーですが、NPBのスカウトも注目をしています。本人も上に行く気で投げているでしょうから、残りの登板でチャンスをつかんでほしいものです。

 吉田以上に安定したピッチングをみせているのは左腕の山藤桂です。後期は3勝0敗、防御率1.36。もともと彼はバッターのタイミングが取りにくいところが持ち味。これをうまく生かし、緩急をつけたピッチングが光っています。昨季とは比較にならないくらい成長しましたね。試合を安心して任せられる存在になりました。

 逆に後期に入って本領を発揮できていないのが、右腕の福永春吾です。後期は2勝3敗、防御率4.13。米国遠征で力任せに投げて打たれた反省を生かし切れていません。ピッチャーに求められるのは球威以上にキレです。キレのあるボールを投げれば、140キロ台でもバッターは抑えられます。

 彼もドラフト候補としてスカウトが視察に来ています。ピッチングを見ていると結果を出さねば、と焦っているように映ります。気持ちだけが先走って、体がついてきていないのです。NPBに行きたいとの思いは十分にわかりますが、まずは現状を見据え、自分にできることに取り組んでほしいと感じています。

 8月29日の愛媛戦では降雨コールドで負け投手になったものの、6回途中1失点と好投をみせました。この日の福永のボールにはキレを感じ、下半身の使い方を修正した成果が出ていました。スカウトにアピールする場は、まだ残されています。自己満足の投球ではなく、いかにバッターを打ち取るかを考えながら、マウンドに上がってほしいものです。

 後期のキーマンにあげていた宍戸勇輝も30日の高知戦で8回途中1失点と良くなっていますから、先発陣は枚数が揃いそうです。抑えに回したエドワード・ウィリアム・ブランセマ橋本隼につなぐかたちができれば、残りの連戦も計算が立ちます。

 逆転優勝に向けて奮起を促したいのは打線です。今季は残念ながら、チームに3割バッターがひとりもいません。不振の原因は一言で言えば、技術不足。しっかりした技術がないために、打ち損じが目立ち、継続して数字を残すことができていません。結果だけを追い求めてボール球を振ってしまうため、淡泊な打線になっています。

 その中でもスカウトから評価を受けているのが、上位を打っている2年目のセカンド増田大輝です。172センチと小柄ながら、俊足で守備範囲が広く、肩も強いところが武器。NPBの選手に例えるなら、広島の菊池涼介タイプといったところでしょうか。打率は未だ1割台ですが、北米遠征を経て、内容は良くなっています。動きにセンスを感じさせる選手だけに、残り試合、走攻守でチームを引っ張ってほしいと期待しています。

 チーム打率.221、本塁打13本ともにリーグ最下位の現状では、少ないチャンスをモノにするしかありません。上位打線の後を打つ5番・小林義弘、6番のトモ・デルプといったバッターが得点圏のランナーを還す展開になれば、得点力はアップするでしょう。

 前期優勝の香川は投打ともに力があります。盗塁トップ(36個)の1番・大木貴将から、中軸の赤松幸輔、松澤裕介、下位の原口翔といいバッターが揃っています。香川には投手陣がいかに無駄なランナーを溜めず、最少失点で切り抜けるかが大切でしょう。

 現在首位の愛媛は正田樹、小林憲幸の2枚看板が強力です。優勝を争う中で、この2人を直接対決でぶつけてくることが予想されます。いかに打線が好投手を攻略するか。何とかくらいついてロースコアのゲームを制したいところです。

 3年連続の年間優勝とドラフト指名へ、この1カ月が本当の勝負。ひとりひとりがしっかりと役割を果たし、一回り大きく成長しながら残り試合を勝っていければと思っています。


中島輝士(なかしま・てるし)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1962年7月27日、佐賀県出身。柳川高時代はエースとして3年春の甲子園に出場。プリンスホテルに進んで野手に転向する。87年のソウル五輪予選で日本代表に選ばれて活躍。本大会でも好成績を残し、チームの銀メダル獲得に貢献する。89年に日本ハムにドラフト1位で入団。1年目に史上2人目となるルーキーの開幕戦サヨナラ本塁打を放つ。92年はオールスターに出場し、打率.290、13本塁打をマークした。96年に近鉄に移籍後、98年限りで引退。その後は近鉄や日本ハムで打撃コーチ、スカウトを歴任。11年には台湾の統一セブンイレブンでコーチとなり、12年途中からは監督に昇格する。14年は徳島のコーチを務め、15年から監督に就任。
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