夜7時から行なわれるシリア戦の前に、メーンのメディアセンターに立ち寄って仕事を済ませる。このメディアセンターは実に快適だ。食事のことは前にも触れたが、コーヒー(エスプレッソ、ラテなど種類豊富)もおいしい。セルフの機械があるのだが、担当の方がいて、つくってくれるという何ともまあ至れりつくせりの状況だ。
(写真:素晴らしい環境のメディアセンター)
◇1月13日 「快適な中で、どうしても慣れないもの」

 資料も多く、困ったことがあればスタッフに相談すると大体、解決してくれる。新聞はアラブ系しかないが、ネット環境もいいし、ここで仕事をすると、凄くはかどる。

 ただ、ひとつ慣れないのがトイレ。カタールのトイレ事情は、男性用の「小」の便器がない。個室に入って用を足すために日本に比べると絶対的に数が少ないのだ。だからメディアセンターのトイレも当然ながら順番待ちとなってしまう。それにトイレに入った瞬間、「小」の便器がないために「これって女性用のトイレじゃないか」と焦ったこともある。ドーハに到着してはや一週間になるが、これだけはどうしても慣れない。

 夕方には日本―シリア戦の会場となるカタール・スポーツクラブスタジアムに移動。昼間は半袖で十分だが、夜はダウンジャケットが必要な寒さだった。川島永嗣選手が退場した物議を醸したあのシーンは、記者席から見てもよく判断がつかなった。味方がボールを蹴っていればオフサイドにはならない。だが日本とシリア側が接触しているので、どっちがボールを出したかは分かりづらかった。レフェリーは日本側のバックパスと判断したうえで、川島にレッドカードを出したということ。試合後、今野泰幸選手は「ボールに触っていない」と怒りをにじませた。確かに映像で見るとシリアの選手が足を振っている。

 大きなミスジャッジではある。しかし、イラン人主審による悪意のレフェリングとは受け取っていない。その後、岡崎慎司が倒された後には日本にPKが与えられた。これも見方によっては、PKと判断されないこともあるだろう。
 結果的には2−1で勝った。ただ、シリアが組織的ないいチームで面白い試合だっただけに、レフェリーのジャッジが水を差したのは残念だった。


◇1月14日 「キャメルレースに癒される」

 徹夜で原稿を書いていたこともあって、朝、昼とホテルでリラックス。テレビのスポーツ番組をボーッと見ていたら、目を引くモノが出てきて思わず前のめりになった。
 それは「キャメルレース」。中東らしいでしょ。
(写真:テレビで流れるキャメルレースの様子)

 ラクダが8km(おそらく)の直線コースを走って競い合うというものだ。ラクダには足が速いイメージを持っていなかったが、これがまあ速いのなんのって。大きなスライド走法で、風を切って走っていた。
 先頭を走っていたラクダくんはレース中盤から独走状態に入り、ぶっちぎりの1位だった。この「キャメルレース」はドーハで3月ごろまで開催されているらしい。オフをつくって、絶対に行ってみたい!
 ちなみに騎手はいない。自分の意思で、ゴールを目指すのである。ゴール前になると何故かみんなスピードを緩めて、歩くようにしてゴールに入る。その姿がまた、ちょっぴりカワイイのだ。

 ラクダに癒されてから、練習取材へ。新たなモチベーションが出てきたことで、僕の足も軽くなった。

(このレポートは不定期で更新します)

二宮寿朗(にのみや・としお)
 1972年愛媛県生まれ。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、サッカーでは日本代表の試合を数多く取材。06年に退社し「スポーツグラフィック・ナンバー」編集部を経て独立。携帯サイト『二宮清純.com』にて「日本代表特捜レポート」を好評連載中。