愛媛とのチャンピオンシップは2勝3敗。最終第5戦で敗れ、年間王座奪還はなりませんでした。初の年間優勝を決めた愛媛は投手陣が素晴らしかったです。

正田樹、小林憲幸の2本柱に、MVPを獲得した東風平光一、元香川の伴和馬が成長し、リードすれば高原和弘、阿部直晃の勝ちパターンが確立されていました。投手担当の加藤博人コーチの手腕が光りましたね。

一方の香川は中川竜也、松澤裕介らクリーンアップが機能しませんでした。9月の13日間で13試合をこなした強行日程の影響か、調子が下降気味だったのが響きました。第4戦ではヒットわずか3本で2-1と接戦をモノにしたゲームもあったものの、最終的には打つべき人が打たないと短期決戦は勝てません。

負ける時にはミスも目立つものです。第1戦を勝って迎えた第2戦では、先発の川崎貴弘が四球から崩れ、流れを渡してしまいました。第5戦では初回にエラーと言っていい内野安打2本をきっかけに先制点を許しました。勝負事はしっかり準備をして、何より結果を出すことが肝心。その意味では負けるべくして負けたチャンピオンシップでした。

ただ、選手たちは1年間、よく頑張ったと思います。前期優勝に貢献したドリュー・ネイラーが中日入りし、チーム事情で選手数が限られた中、投手陣はよく投げてくれました。野手も松澤、赤松幸輔と新人が活躍し、打撃タイトルは香川勢が独占しました(首位打者・盗塁王=大木貴将、本塁打王=中川、打点王=松澤)。

またリーグ全体でも初の北米遠征を実施したり、新たな一歩を踏み出した1年でした。前後期の日程が圧縮され、投手陣のやりくりは大変でしたが、その分、選手はたくましくなったように感じます。高知には藤川球児が入団して注目を集めたことも大きなニュースでした。10年を経て、リーグの存在価値が高まっていることは間違いありません。

独立リーグは1年ごとに選手が大きく入れ替わる場所です。今月末のドラフト会議でNPBに行く選手もいるでしょう。夢を諦めてチームを去る選手もいます。来季のことは、まだどうなるかわかりませんが、我々としてはいい人材を確保し、勝利と育成を両立できるチームを引き続き、つくっていきます。

この時期になると、NPBでも引退や戦力外のニュースが出てきます。今季は50歳の山本昌(中日)をはじめ、多くのベテランが現役を退くことを表明しました。

山本昌とは彼が若い時期に何度も対戦経験があります。特に中日と優勝争いをした1991年には、エース左腕の今中慎二とともに苦しめられました。力のある真っすぐとカーブのコンビネーションで粘り強いピッチングが印象に残っています。

引退する顔ぶれの中にも、個人的には「まだやれる」と感じる選手もいます。中日の和田一浩や小笠原道大です。彼らのスイングを見ていると、そのスピード、強さは若い選手に全く引けをとりません。守備ができなくても代打の切り札として十分に働き場はあるでしょう。若返りを図るチーム方針とはいえ、ここぞという場面ではベテランの力も必要ではないでしょうか。

年長の選手が一気に抜ける分、若手にはチャンス到来です。現状の球界はスター不足。トリプルスリー達成濃厚な東京ヤクルトの山田哲人ら今後も楽しみな存在は出てきていますが、まだまだ伸び悩んでいる選手が多いように映ります。

和田や小笠原のように一振りで魅せられるバッターがもっと増えれば、プロ野球も盛り上がるでしょう。来季に向けて、新たな輝きを放つ逸材が出てきてくれることを期待しています。

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