広島カープを3度の日本一に導いた古葉竹識さんは、79歳になった今も背筋がまっすぐで年齢を感じさせない。ありきたりの表現で恐縮だが、「万年青年」の趣がある。

 

 古葉さんといえば、広島の監督時代、ベンチの隅に隠れることで有名だった。そのため、4コマ漫画などでは、幽霊のように体が半分しか描かれておらず、吹き出しそうになってしまったことがある。

 

 インタビュー中、その話題になり、私が身を乗り出すと、古葉さんは興味深い話を披露してくれた。「実は外野のテレビカメラが私を狙っており、ベンチの方に向くと、カメラの上のランプが赤くなるんです。その頃、私のサインはサードベースコーチを中継して選手に伝わっていた。それを盗まれないために、姿を消したりしていたんです」

 

 当時はサインひとつ出すのにも、大変な苦労があったようだ。

 

 古葉さんは2008年から東京新大学野球リーグに所属する東京国際大で指揮を執っている。4年前には全日本大学選手権でチームを準優勝に導いた。

 

 学生野球を指導するようになってからも、古葉さんはベンチの隅を指定席にしている。さすがにサイン盗みの心配はなさそうだが……。「いえね、あの位置がグラウンドのすべてを見渡すには一番いいんですよ」。いくつになっても指揮を執る上での“ベスポジ”は変わらないようだ。

 

(編集長N)


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