アメリカンリーグ

 ロイヤルズ(シーズン95勝67敗)対ブルージェイズ(同93勝69敗)

 

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(写真:2015年のプレーオフも大詰め。ワールドシリーズ進出を目指した戦いが始まる)

 2カードともに一時は下位シードのチームが王手をかけたア・リーグの地区シリーズだったが、結局は本命視された両雄が順当に勝ち上がった。

 

 ロイヤルズはアストロズに1勝2敗と後塵を拝し、敵地での第4戦も7回まで2-6とリードされながら、そこから底力を見せつけての大逆転勝利。ブルージェイズもレンジャーズ相手に地元での2連敗で追い詰められながら、以降の3連勝で爆発力を改めて証明した。結果的に、両チームともに勢いを取り戻して決戦に臨むことができる。

 

 今季100戦目を終えた時点では50勝50敗だったブルージェイズは、トレード期限までにデビッド・プライス、トロイ・トロイツキー、ベン・リビアらを獲得する大補強を敢行。チームは変わり、同時にア・リーグの勢力地図も変わった。

 

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(写真:左ひざのケガから復帰したマーカス・ストローマンの投球もブルージェイズにとって重要になる)

 ジョシュ・ドナルドソン(41本塁打、123打点)、エドウィン・エンカルナシオン(39本塁打、111打点)、ホセ・バティスタ(40本塁打、114打点)の主砲トリオを中心に、今季メジャーダントツの891得点。そこにエース左腕のプライス、守備に定評ある大型遊撃手のトロイツキーが加わったことで、よりバランスのとれた戦力になった。

 

 一方、昨季は第7戦までもつれたワールドシリーズで手痛い敗北を喫したロイヤルズは、エリック・ホズマー、ロレンゾ・ケイン、マイク・ムースタカス、アレックス・ゴードンといった野手陣の多くがチームに残っている。投手有利のスタジアムを本拠地としながら、ヒット数はメジャー2位、総得点でもア・リーグ6位と今季もまずまずの攻撃力を誇ってきた。

 

 先発投手陣はやや不安定だが、トレード期限に獲得されたジョニー・クエトが地区シリーズ第5戦で本領を発揮したのは大きい。ブルペンの層の厚さではブルージェイズを上回るだけに、総合力では負けていない。

 

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(写真:昨季は地元でのワールドシリーズ第7戦に惜しくも敗れたロイヤルズ。ホズマーを中心に雪辱を果たせるか)

「簡単には忘れられないこともある。傷は消えていないよ。ただ、その悔しさが今季の好スタートに繋がった。また同じ場所に戻りたいという思いがモチベーションになっているんだ」

 今季前半時点で、昨季ワールドシリーズで敗れた痛恨の記憶についてチームリーダーのホズマーは、そう語っていた。

 

“プレーオフの経験”を過大評価すべきではないことは、1年前のプレーオフで無印のまま勝ち進んだロイヤルズ自身が証明したことでもある。ただ、今シリーズのように実力伯仲の場合、昨季に修羅場を潜った経験値が最後の決め手となることはあり得るのではないか。

 

 シーズン中の対戦でもブルージェイズの4勝3敗とほぼ互角。8月には乱闘騒ぎも演じたア・リーグ2強の因縁の対決は、真っ向からぶつかり合う長期シリーズとなることが濃厚だ。そして、大激戦の末に地元カンザスシティで迎えた第7戦で、経験に裏打ちされた勝負強さとブルペンの力がモノを言い、ロイヤルズが接戦を抜け出すとみる。

 

 予想 ロイヤルズ4勝3敗

 

 

 ナショナルリーグ

メッツ(シーズン90勝72敗)対カブス(同97勝65敗)

 

 15日にロスアンゼルスで行われた息詰まる投手戦を3-2で制し、メッツは2006年以来となるNLCS進出を決めた。

 ナ・リーグの頂上決戦で待ち受けるのは、1908年以来、世界一から見放されてきたカブス。ニューヨーク、シカゴという大都市に本拠地を置くスター軍団同士の対決は、ベースボールマニア以外のスポーツファンをも釘付けにする華やかな戦いとなるはずである。

 

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(写真:今後の活躍次第で、怪童ブライアントも真の意味で全国区になりそうだ Photo By Gemini Keez)

 レギュラーシーズン最後の65試合で46勝19敗と破竹の快進撃を続けたカブスは、ワイルドカードゲームでパイレーツ、地区シリーズはカージナルスと強敵を次々と撃破。クリス・ブライアント、アンソニー・リゾー、カイル・シュワーバーといった若手野手たちが続々と頭角を現し、近未来の黄金時代すら予感させるロースターを揃えてきた。

 

 さらに今季後半戦では、ジェイク・アリエッタという29歳の右腕が躍り出て、躍進チームの象徴的存在となった。オールスター以降のアリエッタの防御率は0.75、8月以降に限ればメジャー史上最高の0.41。カージナルスとの地区シリーズ第3戦では5回2/3で4失点と珍しく乱れたものの、この大エースはカブスにとって心の拠り所であり、メッツにとって脅威の存在であり続けるはずである。

 

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(写真:メッツ3本柱のひとり、シンダーガードは豪速球でカブスを圧倒できるか Photo By Gemini Keez)

 一方、メッツは27歳のジェイコブ・デグロム、23歳のノア・シンダーガード、26歳のマット・ハービーという先発投手陣の3本柱がチームの根幹を形成する。それぞれ100マイル近い豪速球を投げるこの3人が試合をつくることが、勝利のためのほとんど必須条件。そして、シーズン途中にチームに加わったヨエネス・セスペデス、地区シリーズで大活躍したダニエル・マーフィを中心とする打線が必要な得点を奪い、今季43セーブのジェウリス・ファミリアが締めくくるのが必勝パターンになっている。

 

 シーズン中の対戦ではなんとカブスが7戦全勝。メッツは、この7試合すべてをセスペデス、デビッド・ライト、トラビス・ダーノウといった主力抜きでプレーしただけに、ここでの結果は特筆すべきではあるまい。ただ……それでも現時点での総合力ではカブスが、やや上ではないかと考える。

 

 死力を尽くしてドジャースを振り切ったメッツに対し、カブスは第1戦でジョン・レスター、第2戦でアリエッタという2大エースを満を持して投入できる。ポストシーズン通算12本塁打、OPS.823はプレーオフに残ったチームの中で1位と打線も好調。何より、激戦区の宿敵たちを破って前に進んできた今のカブスは、“負の歴史”を変えるだけの勢いを感じさせる。

 

 ニューヨークでの最初の2戦中1勝以上を挙げ、地元に戻れば雰囲気は盛り上がりそう。107年ぶりの世界一に突き進む若きタレント集団は、一躍“アメリカズチーム(全米から注目を浴びるチーム)”の趣を帯びるに違いない。

 

 1年を通じて働いた実績のないメッツの先発3本柱が疲れを見せるようなことがあれば、シリーズは一方的なものになりかねない。そういった意味で、メッツにとっては第1戦に先発するハービーの出来が鍵になる。“ダークナイト”と呼ばれるチーム最大のスターが、まずは快刀乱麻のピッチングでカブスの勢いを堰き止めておきたいところだろう。

 

 予想 カブス4勝2敗

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。

※杉浦大介オフィシャルサイト>>スポーツ見聞録 in NY


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