27日に2016明治安田生命Jリーグは各地で開幕を迎える。今季もJ1リーグは2ステージ制で行われ、リーグ王者を決定するチャンピオンシップ(CS)が実施される。1stステージで結果が思わしくないクラブも、2ndステージで優勝すればリーグチャンピオンに就けるチャンスがある。年間1位に輝いてもCSで負けてしまえば、積み上げてきた勝ち点が水泡に帰す。今季のJリーグもスリリングな展開になることは間違いない。

 

 優勝の大本命は連覇を狙うサンフレッチェ広島だ。昨年21得点を挙げたチーム得点王のFWドウグラスの抜けた穴は小さくない。だが、その穴を埋める人材には事欠かない。スーパーサブのFW浅野拓磨のスタメン起用や、FIFAクラブW杯でブレイクをしたMF茶島雄介、ケガからの実戦復帰を果たしたMF野津田岳人、代表経験者のFW皆川佑介に加え、新戦力のFWピーター・ウタカ、FW宮吉拓実らが凌ぎを削る。森保一監督は「1トップ、2シャドーの組み合わせは3セット分くらいある。拮抗したレベルのポジション争いができている」と攻撃陣の充実ぶりに自信を覗かせる。エースストライカーの佐藤寿人も「前線の枚数はいると思う。その中で良いコンディションの選手がチームのために結果を出す」と力強く語っている。

 

 広島は守備陣の層も厚い。3バックの座を今季も千葉和彦、塩谷司、水本裕貴、佐々木翔らが争う。広島の3バックは守備だけでなく、ビルドアップ、攻撃参加と多くを求められ、チームの根幹とも言えるポジションだ。攻守ともにハイレベルな競争が繰り広げられている。今季はAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)、リーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯と過密日程との戦いになるが、選手層の厚さと昨年の経験が活きてくるはずだ。ゼロックススーパーカップでもガンバ大阪を3-1で下しており、盤石な体制で開幕を迎える。

 

対抗はG大阪、鹿島

 

 広島の連覇を止めるとすれば、積極的な補強が目立ったガンバ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズだろう。

 

 昨季のG大阪はリーグ戦、ナビスコカップで準優勝、天皇杯優勝、ACLではベスト4と参加したすべての大会で好成績を残した。FW宇佐美貴史、FWパトリック、MF倉田秋、らが率いる攻撃陣に今オフ、横浜F・マリノスから獲得したFWアデミウソン、MF藤本淳吾が加わる。

 

 司令塔のMF遠藤保仁はゼロックス杯で先発した新加入のアデミウソンについて、試合後にこう語った。「キープ力もある。細かくパスをつなぎながら真ん中を割っていくという狙いも、今年の特長の1つだとは思う。(アデミウソンにボールを)預けられるときはどんどん預けて行きたい。あそこでタメを作れれば、また違った攻撃ができる」。フィットすればG大阪のオプションが広がることは間違いない。ゼロックス杯で広島に敗れはしたものの、G大阪攻撃陣がゴール前で見せた華麗なパス交換がコンスタントに出れば面白い。今季のG大阪はアイディア溢れる攻撃が見られそうだ。

 

 ナビスコ杯覇者の鹿島も戦力が充実している。昨季の鹿島の攻撃を牽引していたのはポルトガル2部のポルティモネンセからレンタルで加わっていた金崎夢生だった。今オフ、一度はポルティモネンセに戻った金崎だったが、16日に鹿島が完全移籍で獲得した。金崎に加え、ボランチには湘南ベルマーレから永木亮太、東京ヴェルディから三竿健斗を補強。GKは清水エスパルスからレンタルでU-23日本代表の守護神・櫛引政敏が加入した。

 

 2列目のサイドアタッカーも人材が豊富だ。MF中村充孝、MF遠藤康、MFカイオのスタメン候補がポジションを争う中、FW鈴木優磨や、トップ下の土居聖真もこの位置でのプレーも可能である。選手の競争心を煽り、高いレベルで切磋琢磨させながら、鹿島は7年ぶりのリーグ優勝を狙う。

 

J2は清水、C大阪、千葉に注目

 

 Jリーグ創設期クラブ“オリジナル10”の1つである清水は、今季の開幕を初のJ2で迎える。FW鄭大世、FW大前元紀、MF本田拓也ら揃って主力が残留し、1年でのJ1復帰を目指す。先に行なわれたJリーグ・スカパーニューイヤーカップのJ3鹿児島ユナイテッドFC戦では5-1と大差で勝利するなど、攻撃時がかみ合った時の爆発力はJ2屈指だ。

 

 1年でのJ1復帰を果たせず、今季もJ2での戦いを余儀なくされたセレッソ大阪。バーゼル(スイス)からFW柿谷曜一郎を完全移籍で呼び戻し、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も期待する逸材のFW杉本健勇を川崎フロンターレから獲得した。昨季終盤から指揮を執った大熊清監督が続投し、日本人タレントと外国籍選手をどのように組み合わせるのか。戦力は申し分ないタレント集団なだけに、監督の采配がカギを握る。

 

 ジェフユナイテッド千葉は選手が激しく入れ替わった。引退、移籍で24人がチームを去り、20人の新戦力を迎え入れた。浦和がケルン(ドイツ)から獲得したばかりのMF長澤和輝をレンタルで補強し、川崎からFW船山貴之、ヴァンフォーレ甲府からDF阿部翔平が加入した。今オフで行われたJリーグスカパー! ニューイヤーカップ宮崎ラウンドでは3連勝で優勝し、14日のちばぎんカップでは柏レイソルを3-0で破るなど結果も残している。ほぼ総入れ替えに近い中、短い時間でどこまで連携を深められたのか。その成果が、千葉がスタートダッシュに表れるだろう。

 

 今季、J3では新たな試みが行なわれる。昨シーズンまで参戦していたJリーグ・U-22選抜がなくなった代わりに、FC東京、G大阪、C大阪の3チームがU-23チームをJ3に参入させる。これでJ3全は16クラブとなり試合数も増える。Jリーグの村井満チェアマンは「若手の出場機会をどんどん増やす」と話し、リーグをあげて若手育成を後押しする。

 

 J1、J2、J3と各カテゴリーに楽しみがたくさんある。スタートダッシュを成功させるのは、どのクラブなのか。最後に笑うのは、最後に泣くのは――。エキサイティングな戦いの幕が間もなく上がる。

 

(文/大木雄貴)

 

<2016Jリーグ第1節対戦カード>

 

2月27日(土)

磐田 × 名古屋(14:00、ヤマハ)

広島 × 川崎F(14:00、Eスタ)

鳥栖 × 福岡(14:00、ベスアメ)

柏 × 浦和(15:00、柏)

湘南 × 新潟(15:00、SBWス)

神戸 × 甲府(15:00、ノエスタ)

横浜FM × 仙台(18:30、日産)

FC東京 × 大宮(19:00、味スタ)

2月28日(日)

G大阪 × 鹿島(14:05、吹田S)