「目がヤバイ。まさか花粉?」

 2月に入る前から早くも目がショボショボするので嫌な予感がした。しかし、花粉の飛散開始予測はまだのはず……。調べてみると「飛散開始」の公表となるのは、2日連続で一定量以上の花粉が観測された時だそうだ。つまり、すでに少量の花粉は飛んでいたのである。

 

 僕は、都内から緑豊かな田舎へと引っ越してから花粉症が発症したので、16年のキャリアを誇る。大自然に囲まれた我が家の周りは杉も多く、車が花粉で汚れるほどその量は多い。風にうねる杉林から薄黄色の煙幕がわき上がるのを目にするたびに軽い立ちくらみを起こしてしまうほどだ。毎年この季節が到来するたびに恐怖に襲われる感じなのである。

 

「もう公園でのトレーニングは当分できないかも」

 僕はハードトレーニングを禁止されているため、ジムではなく近くの公園で懸垂やジョギングなど軽い運動を続けていたのだが、花粉の飛散が落ち着くまでは室内でのトレーニングに切り替えることにした。外に出なくともトレーニングなら、いろいろとできる自信がある。そこで僕が花粉の時期に行なっている家トレを紹介したいと思う。

 

 まず、運動に入る前に横になり、腹式呼吸を行なう。冷え性の僕は血流を良くするために呼吸法を取り入れているが、これが非常に良いのである。呼吸法というと格闘家のヒクソン・グレイシーの「火の呼吸」などが有名だが、僕が行なっているのは、彼らのようなハードなものではない。へそ下9センチにある丹田を意識しながら、鼻で息をゆっくり吐くというだけである。片方の鼻だけで行なったり、早い呼吸など多少のバリエーションはあるものの、基本は呼吸に意識を向けるだけだ。気持ちを集中させる狙いもあるので、トレーニング前に少しの間だけやると良いだろう。

 

 続いて行なうのはライオンプッシュアップだ。このレスラー式の腕立て伏せは、筋トレというよりもストレッチ的な要素が強いので、ゆっくりと筋肉を伸ばすことを意識して丁寧に行なう。肩関節や股関節の可動範囲を広げながら、首や腰を反らせるのだが、太ももの裏側にあたるハムストリングスも伸びて気持ちがいい。回数は50回。

 

 いよいよ下半身へのメニューへと移っていくが、まずは定番のスクワット。プロレス流のヒンズースクワットをゆっくりとした動作で行なう。つまりスロースクワットだ。5秒かけて下ろして、同じ時間で元へ戻るやり方だが、これだと膝に優しいので、ご高齢の方にもオススメである。僕は、スタンスを広くしたワイド式も加え、10分ほど行なった後に「脚上げ」をやる。この「脚上げ」というエクササイズは、筋肉ポーズを取っている肘に向かって膝を高く上げるのだが、腸要筋というインナーマッスルも鍛えられる。これを50回行なってから、メインとなる踏み台昇降運動に入るのだ。

 

12799167_1006379489455930_5123377787260997496_n あのボブ・バックランド選手(写真)が試合前にやっているのを目にしてから、僕もこのトレーニングを取り入れるようになった。バックランド選手は、世界最大のプロレス団体「WWE」の殿堂入りを果たすほど大活躍した名レスラーだ。踏み台昇降運動というと小学生の頃にやったスポーツテストのイメージが強く、正直トレーニングという意識はなかった。しかし、実際にやってみると見た目以上にきつく、効率よく汗をかくことができるのだ。

 

 花粉の時期は、外でランニングができなくてもこの踏み台昇降運動さえやればバッチリだ。やり方は、自宅の階段を使い、まずは一段の高さで10分間、そして2段に変更し3分間やるようにしている。調子が良い時は3段にもトライしている。スクワットの後なので、これだけで十分足腰に効くのだ。動作中に意識するポインはお尻。二足歩行の我々人間にとって大臀筋がとても大切だから、この部位を強化する必要がある。僕は抗がん剤治療を始めてから、体重が10Kg以上も落ち、特にこの大臀筋が小さくなったと感じている。

 

「鏡で見る自分の後ろ姿が貧相で情けない……」

 これは病気をしてからの僕の口癖だ。どうしても以前と比べると活動量が少なくなり、座ったり、横になることが多いため、背面の筋肉が落ちてしまうのだ。体の後ろ側の筋肉のことを抗重力筋というのも納得である。

 

「失ったものはまた取り戻せばいい」。僕は楽天的にこう考えるようにしている。

 そういえば、バックランド選手の臀部は見事に発達し、出っ尻のイメージが強いが、これは踏み台昇降運動の賜物だと思われる。

 

 花粉のキツイこれからの季節は、「目指せ、バックランドのケツ!」を合言葉にしっかりと踏み台昇降運動に励みたいと思う。

 

(このコーナーは第4金曜日に更新します)


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