プロ野球が開幕しました。高橋由伸新監督のもと始動した巨人は、昨季のセ・リーグ王者・東京ヤクルトを3タテしました。開幕3連戦で、開幕投手を務めた菅野智之や女房役の小林誠司、守護神の澤村拓一らの成長ぶりが目立っていました。ルーキー時代を知る私にとって、彼らの活躍は嬉しい限りです。

 

 3年連続開幕投手を務めた菅野は、実はヤクルトを苦手としていました。昨季10勝を挙げたなかで、ヤクルトには1度も勝っていなかったのです。彼はその悔しさを糧に、勝てない原因を追求して、開幕戦は強気のピッチングでヤクルト打線に対峙していました。彼の“変化”は、先頭の上田剛史に対する初球に表れていました。

 

 初球は150キロのど真ん中ストレート。この1球から始まり、7回を無失点に封じました。昨季までは、どちらかといえば“かわしながら抑える投球”でしたが、“攻めながらかわす投球”へと変貌していました。昨季4割1分7割も打たれた川端慎吾にはインコースへの速いカットボールとストレートをうまく使いながら抑えていました。巨人のエースとして十分な内容だったと思います。

 

 菅野の女房役を務めた小林は、見違える程の成長を遂げていました。攻めるところは攻めて、引くところは安全にいくというリードができていました。­ピッチャーの特徴をきちんと把握した上で、それぞれの持ち味を­存分に引き出していたと思います。好機でタイムリーも打っていました。

 

 開幕3連戦で2セーブをあげた澤村は、マウンドさばきが非常に上手くなった印象を受けました。自分の­リズムで­いいボールを投げていたし、落ちつ­いている­澤村を見ることができました。彼は守護神として、俗に言う“板についてきた”という雰囲気を感じましたよ。

 

 ­­ゲームに勝つためには、リリーフ陣の活躍が必須です。今季のブルペンは、スコット・マシソンと山口鉄也を軸に回していくことになるのでしょう。山口は勤続疲労の心配がありましたが、昨季よりも球威が良くなっていたので安心しました。マシソンは相変わらず立ち上がりはバタバタしていましたが、­変化球で­カウントを取れるようになっていました。これまでは、変化球のサインには­クビを振り真っすぐばかり投げていましたが、変化球で­勝負する場面が見られました。これは彼にとって大きな成長です。1戦目は山田にセンターオーバーを打たれて失点を喫していましたが、非常にいい仕事をしたと思います。

 

 今回の3連戦は先発陣が崩れなかったので、高橋監督は継投で必要以上に動く必要はありませんでした。先発が好投してくれれば余計な継投を考えずに済みますが、毎試合そうなるとは限りません。高橋監督の采配については、これから先発陣が疲れてきた時にどのような采配を振るうかどうか。そこを見てみないと、まだ評価できません。しかし、いいスタートが切れたことは間違いないでしょう。

 

4<川口和久(かわぐち・かずひさ)>

1959年7月8日、鳥取県鳥取市出身。鳥取城北高を卒業後、デュプロを経て、81年にドラフト1位で広島に入団。入団3年目に15勝マークすると、86年から91年までの6年連続で2ケタ勝利を挙げ、最多奪三振を3度(87年、89年、91年)受賞した。左腕エースとして活躍し、チームを3度のリーグ優勝に導いた。94年オフに球団史上初のFA権を行使して巨人に移籍。95年にプロ野球史上14人目(当時)となる2000奪三振を達成。98年限りで現役を引退すると、野球解説者の道に進む。09年、10年に巨人の春季キャンプで臨時投手コーチを務めた後、11年に投手総合コーチに就任。4年間で3度のリーグ優勝に導いた。現在は野球解説者として活躍する。通算成績は139勝135敗2092奪三振。身長183センチ、体重75キロ。左投両打。


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