15 愛知県で暮らす谷口一家は生粋の中日ファンだ。谷口諒が幼き頃から、居間にあるテレビでは当然のように中日の試合が流れていた。父・忍の影響もあって、野球に興味を持ち始めた谷口は“この目で観てみたい”と、ナゴヤドームに足を運んだ。これまで野球は観るものに過ぎなかったが、この観戦をきっかけに谷口はプロ野球選手を志すことになった。

 

 谷口の心を動かしたのは、当時、中日でプレーしていた福留孝介(現・阪神)だ。今年6月に日米通算2000本安打を達成した福留は、2000年代前半、中日のクリーンアップとして活躍していた。谷口は「4番・福留」の豪快なスイングに一気に惚れ込んだ。

 

「オレも福留選手みたいになりたい」。谷口は父親に野球をやりたいことを話したが、このとき既に水泳と柔道を習っていた。両親は、幼き頃から始めていた2つの競技を辞めてまで、野球を始めることに対して、あまり乗り気ではなかった。

 

 実は小学1年時にも「野球をやりたい」と両親に打ち明けていた。父・忍には反対する理由がもうひとつあった。「実は野球経験がない親なんです。僕が学生時代の時はハンドボールをやっていたので、野球とは全く畑違いですからね(笑)」と明かす。

 

 親として息子の夢を手助けしたいという気持ちがなかったわけではない。「僕はプロ野球選手になりたいんだ」と、真剣に訴える谷口の姿に根負けした両親は、地元にある野球チームを必死に探し回った。

 

 そして、小学4年のとき、晴れて一宮ジュニアーズ(現・一宮ボーイズ)に入部することとなった。谷口はすぐにレギュラーの座を掴み、6年時にはキャプテンも任された。

 

 恩師との出会い

%ef%bc%99「福留選手に憧れていた」という谷口は、福留と同じ右投左打で野球を始めた。だが、小学6年のときに遊び感覚で右打にしてみると、普段よりも打球が飛んだ。それから現在まで右打席で相手投手を迎えている。

 

 福留選手のような野球選手になりたい――。

 

 バッターボックスの位置は変わっても、その想いまで変わることはなかった。谷口は中学に上がると、地元から少し離れたところにある春日井ボーイズに進むことを決めた。春日井ボーイズは、05年からスポーツニッポン旗争奪東海大会を3連覇している強豪チームだ。これまでとは遥かにレベルが違った。

 

 練習試合に行っても、1打席しか立たせてもらえないなんてことはザラだった。チームが強かっただけではなく、谷口の代にレベルの高い選手が集まっていたのも理由のひとつである。しかし、谷口はどんな逆境でも腐らなかった。

 

 父・忍は当時を振り返って、こう語る。

「1日練習と試合をやってきて、1打席しか立てなくて凡打したときは、帰宅したらずっと練習を続けるんです。諦めないんですよ。あの子はそういう性格みたいです」

 

%ef%bc%98 レギュラーを掴むために、中学3年時にはランニングで練習場に通った。車で約40分の道のりを2時間もかけて走り続けたのだ。全てはレギュラーを勝ち取るための努力だった。

 

 しかし、残念ながら最後まで谷口はレギュラーを掴むことはできなかった。チームが第39回日本少年野球春季全国大会で優勝したときはベンチで喜んだ。厳しさを味わった中学時代だったが、彼の才能を既に見出していた人物がいた。

 

 中学1年のときにボランティアで練習を見ていた長谷川直仁コーチ(現・愛知県立春日井高野球部監督)だ。長谷川コーチの指導は1年限りだったが、谷口を一目見て「将来性のあるすごい選手」だと感じたという。

 

 長谷川コーチとの出会いが、その後の野球人生を大きく変えることとなった。中学卒業後、谷口は長谷川コーチの薦めで、生まれ育った愛知県を離れることを決めた。

 

(第3回につづく)

 

<谷口諒(たにぐち・まこと)プロフィール>

1994年1月10日、愛知県出身。小学4年で野球を始める。中学3年時には春日井ボーイズで第39回日本少年野球春季全国大会優勝を経験。済美高では3年時に主将を務める。甲子園出場には至らなかったが、3年夏は愛媛県ベスト4まで進んだ。13年に横浜商科大に入学すると、1年時からスタメンで試合に出場した。3年秋は打率.293、3本塁打、9打点でベストプレイヤー賞と打点王を獲得。今年から主将としてチームを牽引する。身長178センチ、体重80キロ。右投右打。

 

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(文・写真/安部晴奈)

 

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