これまで放送権と言えば、テレビやラジオの専売特許のようなものだと思っていた。これからは視聴環境の変化に伴い、インターネット事業者のものへと移行していくのだろう。

 

 それを象徴する出来事がJリーグが2017年から英パフォームグループ(以下PG)と結んだ10年総額2100億円という大型契約である。正直、この金額には驚いた。英国の新興企業はJリーグの“企業価値”を、私たちが考える以上に高く見積もっていた。まだまだ成長余力があると判断したのだろう。

 

 Jリーグはまだ切っていない成長カードがある。9月22日付の本紙で金子達仁氏も指摘していたが、外資の導入だ。中東資本に支えられたマンチェスター・シティを例にとり、<「新・巨人」の可能性をつくる>必要性を説いている。

 

 現在の規約ではJ1、J2、J3クラブ資格要件は<日本法に基づき設立された、総株主の議決権の過半数を日本国籍を有する者か内国法人が保有する株式会社であること(後略)>。内国法人というのがミソだ。外資系企業でも「日本に法人の所在地と活動実績があれば問題ない」(Jリーグ広報)。要するに日本法人を設立した上でクラブを運営する場合は規約違反にはあたらないというのだ。既にマンチェスター・シティを傘下に持つCFGは横浜F・マリノスに出資している。出資比率は19.95%。特別決議を阻止できる33%超をとりにいかないのは友好関係にとどまりたいからか。

 

 話を2100億円に戻そう。PGほどのシビアな企業が、極東の国内リーグに、これだけの巨額資金を投じるからには、当然のことながら相応の見返りを求めてこよう。彼らは日本でいうタニマチのようなお人好しではない。コンテンツバリューが上がらなければ、投資効果は得られない。

 

 その際に予想されるのが“外圧”だ。外資規制の緩和は先述したとおりだが、これをもっとわかりやすく、国外にもアピールしろ、と迫ってくるのではないか。基本的に私は外資の完全解禁から背を向けるべきではないと考えるものだが、独自の審査基準を設けるなど、ルールづくりはJ主導で行ってほしい。2100億円に浮かれている場合ではない。Jリーグには「百年構想」という長期ビジョンがある。これを尊重するのは言うまでもないが、今必要なのはアジアを勝ち抜き、世界と渡り合うための実効性ある「十年計画」である。

 

<この原稿は16年10月12日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


◎バックナンバーはこちらから