22日からプロ野球の日本シリーズが開幕する。今季の対戦カードは、北海道日本ハム対広島だ。今季のレギュラーシーズン覇者同士の戦いとなる。試合は初戦、第2戦、第6戦、第7戦は広島の本拠地・マツダスタジアム、第3戦からの3戦は日本ハムの本拠地・札幌ドームで開催される。史上初の“地方球団同士の頂上決戦”を制すのは、西の広島か、それとも北の大地・北海道か――。

 

 広島のカギを握る “シリーズ男”

 広島のキーマンは、トップバッターの田中広輔だ。セ・リーグCSファイナルステージは、12打数10安打、5四球、4打点、打率8割超えという驚異の数字をマークした。9割近い出塁率を誇り、CSファイナルステージのチーム総得点(16得点)のうち、田中は6得点に絡んだ。打撃だけでなく、走攻守でチームに貢献した田中はまさしく“シリーズ男”の名にふさわしい。

 

 特に田中の存在が際立っていたのが、横浜DeNAに3-0で完封勝ちした第2戦だ。この試合で奪った得点は、すべて田中がホームを踏んだ。初回は二塁打、第2打席は10球粘った末、フォアボール。そして、第4打席はソロ本塁打を放った。「打って、走って、見極められる」。まさしく史上最強の1番ではないだろうか。田中が好調を維持できるかどうかが、広島の行く末を左右する。

 

 一方、守りのカギを握るのはリリーフ陣。広島の先発は、エースのクリス・ジョンソン、最多勝の野村祐輔、ベテランの黒田博樹の3枚看板に加えて、岡田明丈、ブレイディン・へーゲンズが予想される。このなかで先発完投型は、ジョンソンのみ。つまり、ジョンソン以外の試合は、6回または7回以降はリリーフ投手に頼ることになる。

 

 今季の広島は、7回は今村猛、8回はジェイ・ジャクソン、9回は中崎翔太の“勝利の方程式”が確立されている。彼らの他にも一岡竜司、大瀬良大地らがブルペンに控えており、リリーフの層は厚い。ヘーゲンズが中継ぎに再転向するプランも浮上しているので、リリーフはさらに盤石となる可能性がある。広島が中盤までにリードをつくれれば、そのまま逃げ切るだろう。

 

 ジョンソンvs.大谷、エース同士の投げ合い

 一方、日本ハムは守護神のクリス・マーティンが離脱したことで、リリーフが手薄になったことが唯一の不安要素だ。しかし、それをカバーするだけの打撃力がある。広島の田中に勝るとも劣らない活躍をしているのが、西川遥輝だ。CS第2戦では、内野安打で出塁して得点に結びつけた。西川を還す役割のクリーンアップも好調だ。今季不振にあえいだ4番の中田翔は、CS5試合で2本塁打を放つなど、ここにきて調子を取り戻している。CSでは主に5番だった近藤健介は打率.389、5打点をマークした。

 

 両軍のレギュラーシーズンにおけるチーム打率、チーム防御率を見ても、投打ともに戦力が整っている。大きく違うのは日本ハムには二刀流の大谷翔平がいることだ。栗山監督は大谷の起用法について、DH制が採用されるホームゲームでの“リアル二刀流封印”を匂わせている。しかし、セ・リーグ主催試合では投手も打席に立つため、マツダスタジアムで大谷が投げれば、日本ハムがかなり有利になる。

 

 シリーズ初戦は大谷vs.ジョンソンの投げ合いが決まった。日本ハムの先発陣は大谷の他に、2ケタ勝利を挙げた有原航平、高梨裕稔、抑えから転向した増井浩俊が揃っているが、有原と高梨にはムラがある。広島に比べると、ブルペンを含めた安定感では劣って見える。その点も踏まえると、日本ハムは初戦を絶対に落とせない。もし、ジョンソンが大谷に投げ勝てば、日本シリーズの流れが広島に大きく傾くことになるだろう。

 

 初戦が日本シリーズの運命を占う一戦になることは間違いない。エース同士の投げ合いに注目だ。

 

(文/安部晴奈)