今年は四国アイランドリーグplusから3選手がNPB入りを果たしました。徳島インディゴソックスの福永春吾は阪神6位指名、木下雄介は中日育成1位指名を勝ち取りました。今季の福永は球威があり、2年連続で奪三振王のタイトルを獲得しました。恐らく22歳という若さも買われたのでしょう。香川オリーブガイナーズからは、松澤裕介が巨人に育成8位で指名されました。ガイナーズだけでなく、リーグ全体的に去年と比べて指名数が減ってしまったので、今年のドラフトはまずまず……といったところです。


 ガイナーズから唯一、NPB入りを果たした松澤は2年連続で巨人から指名していただきました。昨年は育成3位指名を受けていたのですが、故障のため泣く泣く入団を断りました。あれから1年が経ち、再び巨人から必要とされたことは、非常に感慨深いです。


 今季の成績は打率.253、2本塁打、17打点。松澤は長打が持ち味のバッターですが、今季はやや物足りない結果に終わりました。春先は怪我の影響もあり、思い通りのバッティングができていませんでした。その焦りからか、夏場以降はバッティングカウントでの打ち損じが目立ちました。打撃の修正にも取り組みましたが、なかなか思うように改善ができず、苦労したシーズンだったと思います。


 しかし、昨季は2ケタ本塁打をマークしているので、本来のバッティングができればすぐに支配下登録を勝ち取るでしょう。それぐらいの実力はあると思います。

 

 松澤の魅力は強靭な身体

 彼の魅力は、守備範囲の広さと身体が強いところです。巨人は3軍制なので、育成選手をたくさん獲得しています。もうすでに競争は始まっているので、コンディションをしっかりと整えて、持ち味を存分にアピールして欲しいです。


 巨人の外野手には、レギュラークラスの長野久義をはじめ亀井義行、大田泰示、橋本到、松本哲也などが揃っています。中堅からベテランが多い印象です。野手陣で20代のスタメンは、ショートの坂本勇人選手だけ。松澤はまだ24歳ですから、若手の分類に入ります。20代のスタメンがほとんどいないので、チャンスは十分あります。


 そこで、松澤には全盛期の亀井を目指して欲しいと思います。2009年、亀井は打率.290、25本塁打、71打点の好成績をあげ、ゴールデングラブ賞、日本シリーズ優秀賞を獲得しています。当時の亀井の勝負強さは凄かった。淡々とバッターボックスに入って、淡々と守る。やるべきことをきちんとやる。松澤も亀井のような玄人受けするようなバッターを目指して欲しいです。


 彼はハキハキとしていて、非常に性格がいいです。松澤ならすぐにNPBの世界でも溶け込めると思います。巨人にはガイナーズ出身の篠原慎平がいます。今は2軍の抑えを任されるほど評価が高まっているので、2人で切磋琢磨しながら頑張ってくれることを期待しています。

 

 独立リーグは二兎を追う!

 今年で、ガイナーズの監督を就任してから10年が経ちました。最初の5年間のうち3度、独立リーグ日本一を達成しました。そして後半5年間は、NPBで活躍する選手を育てることに力を注ぎました。その結果、ここ数年では、又吉克樹(中日)、アレッサンドロ・マエストリ(元オリックス)、ドリュー・ネイラー(元中日)などNPBの第一線で活躍する選手をガイナーズから輩出することができました。


 独立リーグ日本一も目指さなければなりませんが、最終的な目標は選手をNPBに送り込むことです。“二兎を追う者は一兎をも得ず”と言いますが、僕らは二兎を追わなければいけません。チームにとっての一番は優勝することなので、それを目指しつつNPBのチームの戦力になる選手を試合のなかで根気よく育てていくことが我々の責務です。


 古巣のカープは残念ながら日本一を逃してしまいましたが、素晴らしい戦いを見せてくれましたね。今季引退を表明した黒田博樹、野手のリーダー新井貴浩を見て、ガイナーズの選手たちも学ぶものは多かったと思います。彼のような選手を育てられるように、来季も頑張ります。

 

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