151225馳加工済み伊藤: 10月に発足した第3次安倍改造内閣で、文部科学大臣に就任されました。教育についてもお伺いしたいと思います。パラスポーツのチームに所属している障がいのある人たちに話を聞くと、健常者と同じ小学校に通っていたり、あるいは特別支援学校に行っていたりするのですが、体育の時間をすごく楽しみにしていたそうです。

: それはとてもいいことですね。

 

伊藤: ところが、やはり授業を見学することになってしまう場合も多かったと聞きました。たとえば教員養成の過程で、体育科目の指導法を勉強するのは、中学・高校の体育の先生、小学校の先生を目指す人です。その中にパラスポーツ教育というか、障がいのある子供にスポーツを教える科目があれば、面白いなと思うのですが、いかがでしょうか?

: 特別支援学校の教員がパラスポーツについての知識とメソッドを身に付けることはとても大事です。もちろん、一般の教員にもそういったことを教える講座があった方がいいと私も考えています。それが障がいのある子供も通常学級で授業を受けられるインクルージョン教育をする上で大前提のはずですからね。伊藤さんのおっしゃる通りだと思いますね。

 

伊藤: 障がいのある人に、スポーツを指導するとなると、出来ないことも少なくない。その中で、どうすればいいのかということを先生と生徒が一緒に考えて前に進んでいく。私は教育に関して素人ですが、そうなればとても素敵なことだと思いますね。

: ビルドアップ型、オーダーメイド型と言った方がいいかもしれません。障がいの程度や度合は人それぞれで違いますから。

 

二宮: 確かにそうですね。

: 傾向から、大まかな分類はできるかもしれませんが、やはりひとりひとり発達の度合いも違えば、気持ちの成長だって人によって異なってくる。オーダーメイド型で対応出来るような余裕のある教職員の方がいいに決まっています。従って、養成段階だけではなくて、研修段階においても、通常の学級においても、特別支援学校においても、臨機応変に対応ができるようにしていかなければいけないですね。これは管理職の認識の問題もありますが、私も気を付けたいと思います。

伊藤: 学校でもそれ以外の様々な場所でも、色々な人が混じり合ってスポーツをすることができる。そういう世の中にしていければいいですね。

 

 まずはアスリートファースト

 

二宮: 来年、リオデジャネイロでパラリンピックが開催されます。日本からブラジルまで移動距離も相当長いですよね。障がいのある選手たちが行かなければいけない。競技団体の方々に話を聞きますと、もっとサポートするスタッフが欲しいのが現状だそうです。しかし、その中で連れて行ける人員にも限りがあります。

: おっしゃるように、もっと介助を担当するスタッフなど、支援をしてくれる人が必要だと思いますね。

 

二宮: とは言っても、国もない袖は振れない状態。予算にも制限があるわけですよね。ここの調整はどうされるおつもりですか?

: 当然、スポーツ庁の鈴木大地長官がやってくれると思っています。まず現場の要求をベースで出していただく。現実的なことを踏まえながら、アスリートが安心して臨めるかどうか。ここが一番、大事ですから。

 

伊藤: まずアスリートファーストであるべきだということですね。

: メダルを獲るというのを、第一に考えることは決して悪いことではないと思います。そのためには安心して移動できるようサポートすることもそうですし、到着して間もないまま試合をするのではなく、数日前に着いて体調を整える時間を用意することも必要です。医療的なサポートや家族、パートナーのサポートがあって、"さぁ頑張ろう"と万全の状態で試合に臨めるような環境を、できる限り用意したいですね。


(第3回につづく)

 

1512ch馳浩(はせ・ひろし)プロフィール>
1961年5月5日、富山県生まれ。高校入学後にアマチュアレスリングを始め、3年時には国民体育大会で優勝。専修大学時代にはレスリング部の主将を務める。卒業後は、母校の星稜高校(石川)で教員を務める傍ら、84年のロサンゼルスオリンピックに出場。翌85年にはジャパンプロレスに入門し、プロレスラーに転向した。87年からは新日本プロレスの中心選手として活躍。95年、参議院議員に初当選した。2000年、衆議院議員総選挙に立候補して当選。13年10月より、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部本部長を務める。今年10月から文部科学大臣に就任した。


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